2011年3月31日木曜日

爽快感の無い西部劇/トゥルー・グリット

14歳の少女、マティ・ロス(ヘイリー・スタインフェルド)は、父親を雇い人のならず者トム・チェイニー(ジョシュ・ブローリン)に無残にも撃ち殺された。
犯人に罪を償わせることを心に誓った彼女は、大酒飲みの連邦保安官ルースター・コグバーン(ジェフ・ブリッジス)に犯人追跡を依頼。
さらに議員殺害容疑でチェイニーを追っていたテキサス・レンジャーのラビーフ(マット・デイモン)も加わり、インディアン居留地での危険な追跡が始まった。

コーエン兄弟による西部劇は、ジョン・ウエインがかつて主演を務めた「勇気ある追跡」のリメイク。
そちらは未見なので何とも言えないが、この作品は、今よりもはるかに善悪がはっきりしない時代を舞台に、アメリカ人の考える「侠気」を描いたかのような作品だ。
子供ながらに復讐に執念を燃やす娘も14歳らしからないし、登場する大人たちも曲者揃い。善人とはいえない様な連中しか出てこないのだ。

そして描かれるのは、何処までもリアルな現実。ファンタジーとしての西部劇とは一線を画す内容だ。
都合よく事態が好転したりはせず、ときに無謀にのっぴきならない事態に立ち向かっていく。
そして、静かにノスタルジーを感じるラストシーンまで。
驚くほど地味な話で、華も無く、マティを除くと年寄りとオヤジたちばかりしか出てこないが、最期まで飽きることはなかった。

爽快感の無い西部劇。
ただし、人生のほろ苦さには溢れている。

2011年3月16日水曜日

聖人のような迷惑武神登場!/ 「イップ・マン序章」「イップ・マン」

ブルース・リーの師匠イップ・マンの半生を描いたこのシリーズ。どうゆうわけか、日本では、2作目が先に公開され、映画ファンの要望を受けて、1作目(そういうオトナの事情のせいで1作目は「イップ・マン序章」という苦し紛れなタイトルに改題されてる)を公開するという可笑しな順番になった。

2作を通じて、誠実で道理に合わないことを好まないイップ・マン(ドニー・イェン)は聖人の様に描かれ、ある意味、彼の「融通の利かなさ」や「空気読めない感じ」のお陰で美しい嫁や、周囲が、とんでもないトラブルに巻き込まれていくという展開。
そんな風に説明するとコメディみたいだが、これが意外にも真剣な映画で全く笑えない。

序章では、イップ・マンを武術の達人と認めた日本軍の将校 三浦(池内博之)と空手で対決。
池内は中々の好演だし、副官を演じている日本の役者は、いかにも中国映画に出てくる鬼畜な日本軍人そのもの。最後に怒り爆発のイップ・マンが、三浦をボコボコにしたせいで、家族が命からがら逃げる羽目になるというストーリー。
見所は空手道場で10人の軍人を相手に、空手対カンフーで圧勝するシーン。どっちかというと、後半は残念な感じに尻すぼみだ。

続いて日本では最初に公開された方の「イップ・マン」。
こちらは、戦後の英国領香港で、中国人にも中国武術にも敬意を払わなかった英国人ボクサーのチャンピオンを異種格闘技で、イップ・マンがボコボコにする話。
正直、見所は「序章」の方が多いくらいだが、ボクサーに殴り殺される有名師範ホンをサモ・ハン・キンポーが演じているのが美味しいところ。だって、彼のことウーロン茶のCFだか以外で見るのは久しぶりでしょ?(笑)

で、こちらも、あっけに取られているうち終わる。
カンフーが好きな方にはお奨め。
でも、これより面白い香港映画は、正直、幾らでもあるね。悔しいから2本とも劇場で見たけどさ。(笑)