稲垣吾郎の冷酷演技は、おそらく過去最大のハマり役か!!
弘化元年(1844年)、明石藩江戸家老間宮図書は、筆頭老中土井利位(平幹二朗)邸の門前で藩主松平斉韶(稲垣吾郎)の異常性格と暴虐を諌める訴状と共に自決。
しかし、腹違いとは言え将軍徳川家慶の弟である斉韶には、将軍より来年、老中に抜擢するとの内示が出ており、家中のみならず幕府首脳にも事件の動揺が広がっていた。
暴君が国の政の要職につくことに大きな危機感をもった老中土井は、斉韶の密かなる排除を決意。
利位の命を受けた旗本島田新左衛門(役所広司)は13人の暗殺部隊を編成し、参勤交代により帰国途上の斉韶一行を中山道落合宿で待ち構え、襲撃する計画を立てる。
一方、剣術の腕をかつては新左衛門と磨きあった斉韶の腹心・鬼頭半兵衛(市村正親)は暗殺の予兆を掴んで備えていた。襲う側と守る側で対峙した両雄の頭脳戦。そして、ついに要塞と化した落合宿を舞台に300人対13人の死闘の幕が切って落とされた。
暴君に支配された藩の苦悩。斉韶の暴君振り、残虐振りを描く衝撃的で痛々しいまでの描写。藩主暗殺を決定するにあたっての苦渋の決断。これらドラマ部分のリアリティや緊迫感が積み重ねられて、なぜに暗殺者となった男たちは、無謀な戦いに身を投じたのか、その意味が描かれる前半戦。
そして知略を駆使して、圧倒的不利を克服しようとする中盤、かつてのライバルが攻守で対峙する構図とラスト50分間の死闘。2時間をゆうに越える作品でありながら、それを感じさせずに一気に見せた監督、三池崇史の演出は男くささと血生臭さの漂う、彼が得意とする題材を得て、60年代の集団抗争時代劇の名作を世界に通用するエンタテインメントとして蘇らせた。
オリジナルの13人対53人、30分間の死闘を13人対300人、50分間の死闘に大げさにスケールアップさせるにあたって、最大の見所はこだわりぬかれたライブアクションシーンだ。広大な宿場町のオープンセットを建造。落合宿全体に張り巡らされた罠や仕掛けの数々、平和な時代、真剣で斬り合ったことの無い侍達が、死に物狂いで刀を振るう様は、手段を選ばず、様式的な殺陣にはないリアルさで、鬼気迫るものがある。
そして、この手の作品、対峙する悪が魅力的であることは欠かせない要素だ。
当初、顔立ちは端整でも表情が無くて演技が出来るイメージが無い稲垣吾郎の名前を見て、正直、首をかしげていた俺。
しかし、無表情に無抵抗の人間を殺しまくる暴君に彼は、恐ろしいほどピタリとはまり、何を考えているのか、何をしでかすか分からない狂気が最後までスクリーンを支配した。
また、そんな暴君であれ、命懸けで守ろうとする腹心の鬼頭を演じた市村正親と、刺客のリーダーを演じる役所広司との静かだが火花散る対峙の構図は、派手なアクションシーンとは別の迫力で観客を魅了。
山田孝之、伊原剛志、松方弘樹、沢村一樹、高岡蒼甫、六角精児、波岡一喜、石垣佑磨、近藤公園、窪田正孝ら若手から大御所までの刺客たちもそれぞれが個性的で、今回、山の民という設定で登場し、刺客に加わることになった木賀小弥太を演じる伊勢谷友介に至っては、「七人の侍」の三船敏郎をイメージしたんだろうなぁとニヤニヤ出来るようなキャラ設定になっていたりもする。
色んな意味でヌルいエンタテインメントではなく、衝撃的描写と権力闘争する組織を描き、かつて挑戦的だった頃の日本の時代劇をスケールアップして再生させた、とんでもない野心作。
気弱な彼女やSMAPの稲垣ファンが劇場でトラウマを作るような、そんな作品。
NARIZO的には大絶賛なので、是非、見ていただきたい。
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