2012年6月25日月曜日

アメイジング・スパイダーマン

ネタ枯れのハリウッドは近年リメイクだのリブートだのに御執心で、「バットマン」に続いて「スパイダーマン」も作り直すんだ...と最初にこの企画を聞いたときにはあまり良い印象を持っていなかった本作。
しかし、予告編の圧倒的な飛翔感。しかも3D。まぁ、期待せずにチェックだけでもしておくかと、先行上映の劇場へ向かった。

で、どうだったのか?
前のシリーズ、あれはあれで好きだったのだが、もう、最初にはっきり言ってしまおう。
今回の「スパイダーマン」は最高だ。正直なところ、前のシリーズよりも気に入った。
前のシリーズを知らなかったり、アメコミの映画はチョッと...という人もきっと、夢中になれると思う。

先ず、言うまでも無いがこの作品は3D向きだ。
ニューヨークの空を飛翔するスパイダーマンを目まぐるしくカメラは追い、時には彼の視点で飛んでいる体験を観客にも与えてくれる。圧倒的な没入感。劇場の大スクリーンで、ぜひ、これは体験して欲しい。
映画を見ると言うより、映画を体験するという表現の方がしっくりくる迫力の映像体験が待っている。

続いてキャスティング。
主人公のピーター・パーカーを演じるのはアンドリュー・ガーフィールド。
ナイーヴさと、高校生らしい爽やかさや、真っ直ぐさ、行動力を持った魅力的なヒーローになっている。
ガールフレンドになるグウェン・ステイシー(エマ・ストーン)も、主張と行動力のあるキャラクター。
何より、しばしばゴリラ顔になってしまう前シリーズのヒロイン、メリー・ジェーン(キルスティン・ダンスト)よりも美人で華やか。
葛藤するより行動するタイプに生まれ変わったメインキャラに引っ張られて、テンポやテンションも前シリーズより大分上がったように思う。

元々善人が、モンスターへと変異してしまう物語のパターンは、かつてのシリーズを踏襲している。本作でもカート・コナーズ博士を演じるリース・イーヴァンズが、なかなかに良い味を出していて、ちゃんと何故、彼がリザードに変身しなくてはならなくなったのかや、リザードなりの正義があることが観客に伝わってくる。

そして語られる物語は「スパイダーマン」の誕生。

爽快感に溢れるラストと、エンドロールの途中で、最近のお約束のように次作へのフリが挟まって、早く続きが見てみたくなった。
マーク・ウェブ監督には、この手のアクション映画のイメージがまるで無かったんだけど、次回作も是非、監督して欲しい。
でも、日本のバンドのタイアップは違和感満載だったな。wあれは今回だけの趣向にしてくれ(笑)。


2012年6月16日土曜日

スノーホワイト

魔力をもって王国を我が物とした女王ラヴェンナ(シャーリーズ・セロン)は魔法の鏡にいつも問いかけていた。
「鏡よ、鏡。この世でいちばん美しいのは誰?」「もちろん女王様です」。
女王を超える美貌をもつ娘が現れない限り、彼女の魔力は絶大で無敵のはずだった。
しかしある日、鏡はこう言った。「この世でいちばん美しいのは女王様ですが、やがてあなたよりも美しい娘が現れます。その時、娘の心臓を食べれば、あなたは永遠の美と若さを手に入れ、不死身となるでしょう」
その娘が自分の継娘スノーホワイト(クリステン・スチュワート)だと知った女王は、彼女を殺そうとするのだった。

プーマ、ナイキ、ノキア、トヨタなどのCMディレクターとして、クリオ賞、カンヌ国際広告賞など数々のアワードを受賞してきたルパート・サンダースの長編映画初監督作品。
CM出身の監督らしく、CGを多用して誰もが知る「グリム童話」の世界を飛び切りダークに、そして幻想的なビジュアルで再構成。オトナの「白雪姫」の世界を創造することに成功した。

見所は、邪悪な女王ラヴェンナ(シャーリーズ・セロン)と穢れを知らないスノーホワイト(クリステン・スチュワート)の火花を散らす美女対決。

特に若い娘から精気を吸いとらないと、みるみる老化してしまうラヴェンナ女王を演じるシャーリーズ・セロンは、CG以上に演技面でも冷酷な美女として観客の目を惹き付ける。
この手の題材では、「悪」に魅力が無ければ、主役は惹き立たない。
その点で、流石はシャーリーズ・セロン。いい仕事をしている。
一方、クリステン・スチュワートはなんといっても目が綺麗。
彼女の出世作にあげられている「トワイライト」のシリーズは一本も見たこと無いんだけど、この女優さんの佇まいとか、雰囲気はこの手のファンタジーにはホント、ピッタリで、凛としつつも可憐。
それから、ハンターのエリックを演じたクリス・ヘムズワースは、何だか昔のブラッド・ピットを見ているような雰囲気で、女性の観客も楽しめるんじゃなかろうか。

コマーシャル出身監督の初長篇映画演出だと、しばししばヴィジュアルが先行するあまり、話がメタメタになってしまうケースがあるわけなんだけど、その点、「白雪姫」という誰もが知る物語を題材として選んだのは実にクレバーだったと思う。
有名な物語を元にしたシナリオを自分のヴィジュアルイメージに再構築した結果は、「鏡」や「森」、「りんご」、「七人の小人」に至るまで、ああ、そう来たか!という驚きをもって楽しめた。
シナリオにはちょっと野暮ったいところもあっけど、長篇監督デビュー戦として、中々よい結果だったんじゃなかろうか。

最後に「白雪姫」って、そんなにダークで怖いおとぎ話だったっけ?って皆さん。
東京ディズニーランドで、「ホーンデッドマンション」なんかより、はるかに幼児が泣き叫ぶアトラクションは、「白雪姫」ですからね。(笑)

2012年6月3日日曜日

外事警察 その男に騙されるな

朝鮮半島で濃縮ウランの流出が判明。一方、日本では原発事故による立ち入り制限地域の研究所から、核兵器開発に利用可能な軍事機密データの消失が発生し、日本での核テロが懸念される事態となった。
日本に密入国するテロリストを取り締まるためなら、あらゆる手段を使う警視庁公安外事課の住本(渡部篤郎)は奥田正秀という男を工作員ではないかと睨み、その妻・果織(真木よう子)に接近。
韓国諜報機関NISも潜入捜査官を日本に送り込み、テロリスト、NIS、外事警察の思惑が交錯する中、事態はいよいよ切迫していく。


オウム真理教と警察との攻防を徹底取材のドキュメンタリー「極秘捜査」等、徹底的に取材して警察組織を描く作家 麻生幾の小説が原案。
これまで殆どスポットを浴びることが無かった警視庁公安部外事課をリアルに描き、2009年に放送されるや、異色の警察ドラマとして大きな評判をよんだNHKの「外事警察」の映画化。
水面下で組織が暗躍するドラマのダークな世界観そのままに、メガホンを取ったのはテレビ版に続いて堀切園健太郎。
ついでに大半のシーンも暗がりだ(笑)。

今回は、渡部篤郎、尾野真千子、石橋凌といったお馴染みのキャストに加えて、核の鍵を握る重要人物に、田中泯や、キム・ガンウを加え、緊張感溢れる演技バトルが火花を散らす。

徹底取材の末、映画的な嘘を巧みに織り交ぜた古沢良太の脚本は、誰も信じられない諜報戦を抑えたトーンで描き、リアリティにこだわった画の創り出す静かな迫力が、130分近い時間、観客にも緊張を強いる。

全てが明らかになるラストで、観客の前に提示されるのはまさに目的のために手段を選ばないダークな世界。
テレビドラマとは独立したエピソードになっているので、ドラマを知らなくても楽しめるが、ドラマ版に夢中になった記憶があるならば、ぜひ、劇場へ住本に会いに行ってみるべきだ。
「その男に騙されるな」。