そんな彼に会社は、出張を廃止し、テレビ電話でリストラを告げる改革案を提案した新入社員のナタリー(アナ・ケンドリック)の教育係を任命。二人の出張が始まった。
小粋で笑えるが、ほろ苦くて考えさせられるオトナ映画。残念ながらアカデミー賞は逃してしまったけど、「リストラ宣告人」を主人公に、誰かの人生を変えてしまう面接をフェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションで繰り返してきたプロフェッショナルと、マニュアル通り、テレビ電話越しにそれをこなして、出張経費を節減しようと提案する優秀な現代っ子の二人を「出張」させる展開は、時代を捉えている。
ナタリーは目の前でリストラを告げられ、動揺し、激高し、または激しく落ち込む人々の姿を目の当たりにして、衝撃を受け、挙句、皮肉にも恋人からメール一つで別れを告げられてしまう。
ITの力でコミュニケーションは効率化し、様々なメリットを世界にもたらした一方、あえて直接会って話しをすることの「意味」、「価値」は、より大きくなっている。そもそも、人間社会の中で効率化してはいけないコミュニケーションがある事が、説教臭くないカタチで語られる。
ブライアンのエピソードでは、価値観が似ていて、出張で全国を飛び回っているアレックス(ヴェラ・ファミーガ)に、セックスフレンド以上の感情を持ち始めていく様が描かれる。ひとりは自由で気楽、しかし、いつまでも、それで良いのか...という、これまたリアルな葛藤の芽生えは、30過ぎで悠々自適に独身生活を送るビジネスマンのひとりとして、中々イタいところを衝かれた気分で、複雑に共感してしまった(笑)。
主役が、それは駄目だろって要素も含め、可愛げな雰囲気で中年独身を演じられるジョージ・クルーニだったから、余計に良かったというのはあると思うけど、ほろ苦くて、チョット痛い、「よい年」のオトナたちが織り成すドラマは、日頃、考えてそうでそんなに真剣に向き合っていない(向き合わないようにしている?)生き方や価値観について、改めてどう思う?と、問いかけてくる。
監督・脚本は、俺の大好きな「サンキュー・スモーキング」や「ジュノ」など、ユーモアの中で風刺の効いたドラマを作るのには定評があるジェイソン・ライトマン。だから絶対面白いだろうなぁ..という期待はあったんだけど、期待通り。いま、激しくオススメの1本。