だが演出家は優等生的な彼女が得意とする純真な白鳥の女王役だけでなく、邪悪で官能的な黒鳥を演じることも要求。そのプレッシャーに次第に押し潰されていく。
奔放な新人ダンサー、リリー(ミラ・クニス)が代役に選ばれたことで、さらに追い詰められたニナは、黒鳥を完成させつつも、精神的に自壊していくのだった。
「白鳥の湖」と言えば、あまりにも曲が有名なのでついつい知っている風な気になっていた俺だけど、あれ、あの話に黒い鳥なんて出てきたっけ?と不思議に思ってたら、なんと俺の頭ん中「醜いアヒルの子」と物語がゴッチャになっていた(笑)。
そんな残念な俺だけど、この作品が描くのはプレッシャーに押し潰されるプリマの話。その緊張感はバレエなんて知らなくても共感できる世界。
壊れていくナタリー・ポートマンの演技は凄い。ダンスのみならず際どいシーンも含め、かなりの体当たりだけど、確かに彼女自身の課題なのかと思っちゃうほど、どんなシーンでもあまり、官能的な感じが無い。
とにかく観客が共有させられるのは「不安感」。
縦揺れ激しい手持ちカメラが動きまくるカメラワークで冒頭から嫌な感じではあるんだが、本格的に病みはじめてからは指の付け根までササクレがめくれる妄想とか、生理的にイメージ可能な痛い描写のつるべ打ち。
観客も何が現実で何処までが妄想なのか、次第に分からなくなっていく。
とにかく、ナタリー・ポートマンの病みっぷりは半端ない。怖いくらいだ。
緊張でご飯が食べれなくなるとか、眠れなくなるとか、もうそういう次元じゃない。
黒鳥は拍手喝采で完成に向かうも、とにもかくにも破滅的。
これはこれで、デートで見ても見終えた後、ある意味話題が盛り上がりそうなレベル。
でも、スーパー・ネガティヴシンキングが主人公なだけに、自分のテンションが堕ちてるときにはこの映画、お奨めしない(笑)。
あと、ウィノナ・ライダーがすっかり年老いててビックリ。
まぁ、「レオン」に出てたナタリーがこんなに大人になるんだから、当然だけどね。