これは間違いなくクエンティン・タランティーノの最高傑作だ。
正統派かどうかなんてのはどうでも良い。
この30年間に公開された西部劇の中で一番面白いかもしれない。俺はそう思った。
キャラクターは全員くせもので悪辣かつ残忍、血煙上がるガンファイトは冴え渡り、ストーリーは痛快でシニカル、惹き込まれる魅力をもった娯楽作品だ。
インターナショナルなマーケティングに明け暮れた末、ハリウッドの大作はオリジナリティを失った。
キャラクターの内面を表現するドラマよりも、派手で判りやすい画をひたすら追求し、中身がスカスカの空虚なアクション大作を量産した。
この作品にはそんなハリウッドが、アクション娯楽作品を作るうえで何処かに忘れてきた大切なものが、いろいろ詰まっている。
簡単に言えば黒人の奴隷が、賞金稼ぎになって、白人の悪人どもを皆殺しににしながら悪趣味な農園主の元で虐待されている生き別れの妻を救いに行く話しだ。
ストーリーの根底に流れているのは義理人情、純愛であり、そこに描かれる怒りは、ながい我慢と忍耐の末に爆発する感情の発砲だ。
アメリカ映画界でも屈指の映画オタク、タランティーノが愛しているブラックムービーや、日本の仁侠映画、時代劇の価値観が、この西部劇の中には息衝いている。
それを感じ取れる俺たちは、一触即発のメキシカンスタンドオフで、キング・シュルツ(クリストフ・ヴァルツ)やジャンゴ(ジェイミー・フォックス)の怒りが爆発する展開に、思わず喝采を贈ってしまう。
人種差別の歴史が影を落とすアメリカ人よりも、客観的にストーリーを楽しめる日本人のほうが、純粋に娯楽として作品を楽しめるかもしれない。
日本人が愛するヒーロー像にジャンゴやシュルツは重なるのだ。
つまり過激な手法も交えつつ、タランティーノはコマーシャルになり過ぎたハリウッドの大作が切り捨ててしまった泥臭さを現代風に演出して、皿の上に並べて見せたのだ。
とにかくジェイミー・フォックスのジャンゴは最高にクール。
ちょっと肥えて、いけすかない悪役が板に付くようになったレオナルド・ディカプリオの農園主や、農園の奴隷頭を不気味に演じるサミュエル・L・ジャクソンなど、脇を固めるビッグネームの使い方も、実に良い。
そして想像を裏切りつつも、怒りに繋がる伏線の張り方が上手い、素晴らしい脚本。
これだけ挑戦的な娯楽作品に、今年のアカデミーは脚本賞を贈った。
それもまた痛快じゃないか。
何度も言うけど、奴隷だった賞金稼ぎが、悪い白人を皆殺しにして妻を救う話だかんね。(笑)
「どうだ、アカデミーを牛耳ってる白人のジジイども!」って、タランティーノが悪戯っぽく舌を出してそうな気がする。
アクションの演出は、タランティーノのやりたい放題。
まさにキャリアの集大成。
いろんな意味でタランティーノが爆発している。
いや、 ホントに、爆発してるんだ。(笑)
これは、何度でも見たい映画の一本になった。
長いはずなのに全く長さを感じさせない165分。
アクション映画が好きなら、タランティーノが好きだったら、 西部劇だぁ...とかって食わず嫌いは言わずに黙って、客席に座っておくべきだ。
大きなスクリーンで見ておかないと、絶対、後悔する。
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