自分の命と引き換えに800名の乗員の命を救った伝説の父親を持つ、不良少年カークは、やがて惑星連邦の士官へと成長。やがて新鋭艦USSエンタープライズに乗船する事になる。J.J・エイブラムス監督が、オリジナルシリーズをカークの成長を通して再構築した新たなる「スター・トレック」。
小学生時代に「スター・ウォーズ」をスクリーンで見て、その衝撃の大きさから「ドラえもん」映画を卒業した俺としては、乗組員が全員ジャージみたいな服を着ていて、しかも耳のとがったおかっぱ頭の宇宙人が出てくる、いかにもヌるそうな「スター・トレック」は、何かカッコ悪い存在に思えて、実際、一度もまともに見た事が無かった。
今回の作品も、延々と続く、テレビシリーズや映画シリーズの続き物だったら、絶対に見ることは無かったと断言できる。
しかし、今回は、現代的解釈と映像技術、キャストを一新してオリジナルシリーズをイチから再構築する試みであることと、特にオリジナルシリーズのファンではないと公言するJ.J.エイブラムスが監督したこと、更に試写を見た周囲の評判が意外に良かったこともあって、騙されたつもりで劇場へ足を運んでみた。
結果。
これが、中々、面白かった。
英雄視される父を持ち、才能はあるが反抗的で無鉄砲なカーク(クリス・パイン)の生い立ちと士官としての成長。
人間とバルカン人の間に生まれ、聡明で常に論理的、感情を滅多に露にする事が無いスポック(ザッカリー・クイント)の生い立ちと葛藤。
このシリーズの主役的なキャラクターである二人の対立を中心に、二人の運命を左右する或る事件と、やがてその背後にある共通の敵に立ち向かって友情を育むストーリーは、非常に魅力的で、サブキャラクターの個性も上手く活かされつつ、適度な笑いとスリル、畳み掛けるようなテンポで、最後には、この先もきっと続編が続いていくんだろうなぁ...という期待感をきっと多くの人が感じそうな作品だった。
が、その一方、結局は再生された名作SFシリーズの壮大なる人物紹介編と言えなくも無く、この手の作品を盛り上げる上で欠かせない、強い悪役、悪のカリスマ性、悪の魅力・存在感...が、敵役のネロ(エリック・バナ)には欠けていて、どうも、締まらない。物足りないのだ。
ネロは10億人も殺したわけだから、極悪非道なはずなんだけどね...。全く迫力不足。ただのスキンヘッド兄さんにしか見えない。悪役としては実にトホホな存在だ。
でもハッキリさせておきたいのは、エリック・バナが決して下手だったとか、そういう話ではない事。
あまりにも主役二人を描くテンションが高すぎて、悪役の出番や印象、キャラクターを表現する時間やエピソードが相対的に小さく、もう一つの対立軸に居るはずの重要な役であるにもかかわらず、かなり存在感が薄くなってしまった事に、俺が満足しきれない原因があったように思う。
そもそもこの作品、ネロの設定自体が、何か迫力に欠けるし、この設定を時間を掛けて見せたところで、まともな悪役が描かれたかどうかは怪しい話なので、どのみち、エリック・バナは被害者だ。
ここまでエンタープライズ側のキャラクターを魅力的に描いたわけだから、その労力のほんの少しでも、敵キャラの人物造形に振り向けてあげて欲しかった。他のキャラと違って、どうせこの作品だけで死んじゃうとしてもね。
まぁ、そんな訳で、面白かったけど、「何かヌルいSF」という印象自体は、リ・イマジネーションされても変わるコトが無かった。むしろ、「やっぱりこんな感じなんだ」という感想(爆)。
オールドファンには、最新技術で蘇ったエンタープライズが飛んでるだけでも興奮だろうし、オリジナルキャストでスポックを演じているレナード・ニモイが登場するあたりも、嬉しいんだろうね。
でも、この調子で作られる続編はどんどん学芸会的になっていきそうな予感がするし、毎回、豪華キャストのトホホな悪役が出てくるコトを期待すると、馬鹿映画として中々、高いポテンシャルを持ったシリーズが始まったと言えるかもしれない。
馬鹿の臭いがする続編が出来たら、またエンタープライズのクルーに会いに行こう!!
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