OL2年目で会社を辞めた芽衣子(宮崎あおい)。 音楽への夢をあきらめきれないフリーターの種田(高良健吾)。不確かな未来に不安を抱えながら、二人は、お互いに寄り添い、東京の片隅で暮らしていた。ある日、唐突に訪れた種田の事故死。喪失感に打ちのめされた芽衣子は、愛する人を「忘れない」ため、「現実」を受け止めるために彼が残した曲「ソラニン」を歌うことを決める。
累計60万部の浅野いにおの傑作コミック「ソラニン」をPV出身の三木孝浩が初監督。
危なっかしいまでのキャラクターの繊細さ、青臭さい展開に、少しばかり乗り切れない感じだった前半から一転、中盤以降は切なく、最愛の恋人、友人を失ってしまった登場人物たちが、それを乗り越え、前に進むために、音楽を通じて一体となり、その想いが昇華していく様を熱っぽく魅せてくれる。
バンドのメンバーを演じたサンボマスターの近藤洋一や、桐谷健太の存在もよい。ちょっと過剰テンションだけど。それも含めて。
しかし、この作品の魅力の大部分は、何と言っても愛くるしい表情で、純粋なヒロインを熱演した宮崎あおいの演技に寄るところが大きい。自分に自信がもてず、彼氏の夢に自分の夢を重ねて刹那的に生きていた芽衣子が、遺された楽曲を通して前に進み、成長していこうとするその姿は美しく、力強く、しかしどこか儚げだ。
そんな危ういバランスを要求される役柄を嘘を感じさせず演じきり、ラストのグルーヴ感に溢れたライヴシーンまで、一気に駆け抜ける。妥協なく音楽と向き合って演奏し、歌い上げたリアリティと熱がスクリーンのこっち側にまでガンガン伝わってくる、あれは名シーンだった。
もうひとり、気になったのはオトナな雰囲気に成長した伊藤歩。
この二人の女優が魅力的に作品を引っ張って、線の細い、繊細な印象の高良健吾と絶妙なコントラストを醸しだしている。
「ソラニン」は、誰にでも多少は思い当たるであろう、青臭いけど瑞々しく、ちょっとイタかったあの頃の感情を呼び起こさせてくれる、そんな青春映画だ。
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