ある日、一家の長男ヴィクトル(モーリッツ・ブライブトロイ)は、親友ルディ(ゲオルク・フリードリヒ)に絵の在りかを教えてしまう。
しかし、ナチスに傾斜していたルディは、軍で昇進するためにそれを密告、イタリアとの同盟維持の材料にムッソリーニに絵を贈ろうと画策したナチスにより、一家は絵を奪われ収容所へと送られる。
しかし、それはこの日を予期していた父が描かせた贋作だった。
息子に謎のメッセージを残して収容所でこの世を去った父。
本物を探すナチスに対し、ヴィクトルは絵の在りかも分からぬまま、母の命を救うための危険な駆け引きに出る。
ユダヤ人画商の一家が主人公だが、この作品は陰惨なホロコーストを描いたこれまで多くの映画とは異なる視点で、新しい形のコンゲーム(confidence gameの略で相手を信用させて詐欺をはたらく)として大いに楽しませてくれる。
冒頭の輸送機の墜落シーンから、時間が巻き戻されて語られるストーリーはまさに二転三転。
輸送機の墜落を利用して主人公のヴィクトルがナチス将校に成り代わる展開などは、まさしく「映画」の痛快さ。ルディはじめナチス側のキャラクター達も、ちょっと抜けていて憎めない。
父親の残した謎のメッセージは、観客にもおおよそ察しが付く様なもののため、ラストの展開は色んな意味で読めてしまう。
それでも絵の在り処に気付かない振りを装ったヴィクトルがそれを取り戻す過程は見ていて楽しかった。
詳しくは、ここでは書かないので本編を是非、ご覧いただきたい。
昔の映画の薫りがする洒落っ気の効いた、サスペンス。
地味ながら小粋で映画らしい映画だった。
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