しかし、彼女の美貌は全身整形。「目ん玉と爪と髪と耳とアソコ」以外はすべてつくりものだった。
整形手術の後遺症が身体を蝕み始める中、美容クリニックの隠された犯罪を追うもの達の姿がちらつく。
結婚を狙っていた御曹司は別の女と婚約。さらにはトップスターの座を脅かす後輩モデルの登場。
究極の美の崩壊と、頂点から転落する恐怖に追い詰められたりりこは、現実と悪夢の狭間で滅茶苦茶に疾走する。
スキャンダラスに剥き出しの欲望が渦巻き、美しく在り続けることにのみ自らの存在意義を見出せるトップスターの転落と崩壊を描くこの作品。
いつか失われる「美」への恐怖。いつか「消費」され尽くし、「忘れられる」ことへの恐怖。
そして消費する大衆の「無責任」。そんなテーマの重さに正面から向き合いつつ、ポップな極彩色に彩られた蜷川実花の演出は、哀しくもポジティヴにストーリーを紡いでいく。
スキャンダラスでタブーな匂いが漂うセンセーショナルな作品。
話題だけで中身のヌルい、よくある漫画原作映画とは一線を画した野心作だ。
「美」意識を強く求められる世界でクリエイターとしての顔を持ち、まさに世間の欲望を体現した虚飾と儚げな世界の創り手の1人でもある女性監督-蜷川実花だからこそ語りえた物語がそこには広がっていて、一気に惹き込まれる迫力がある。
ヌードシーンやベッドシーンについても話題だが、扇情的というよりは美しく、そしてどこか哀しげだ。
大胆でありながらも原作の世界観に忠実な金子ありさの脚本も、漫画原作という難物を克服し、新たな価値を創造している。
最近は専ら芸能ニュースの話題でしか名前を聞く機会が無かった気がする沢尻エリカ。
しかし、このキャスティングは話題づくりだけのものではない事を作品を見れば思い知るだろう。
この作品は、彼女が優れた「女優」だったことを思い出させてくれる。
沢尻エリカのイメージと皮肉なくらい重なるリリコという強烈キャラクター。
この作品の沢尻はリリコそのものだ。美しく痛々しいリアルなリリコを観客は目撃することになる。
また、事務所の社長を演じる桃井かおりや、マネージャーの寺島しのぶ。
検事の大森南朋、後輩モデルの水原希子、整形医の原田美枝子など脇を固めるキャスティングも豪華で曲者揃い。
こうなると唐突な感じのテーマソングが浜崎あゆみ(しかも昔の曲「evolution」)なのも、もしかしたら消費される音楽の代表ってコトなのかと勘繰りたくなる。
多くのファッション雑誌や広告が、作中から現実にリンクする仕掛けを初め、それらのビジュアルを写真家としての蜷川実花が撮りおろすなどマーケティング的にも野心的な試みに溢れ、公開時期の7月に向けて非常に展開が楽しみだ。