2012年8月12日日曜日

トータル・リコール

大きな戦争を経て正常な環境を失った世界。
人々に残された場所は、裕福なブリテン連邦と貧しいコロニーという2つの地域だけだった。
コロニーで暮らす工場労働者のダグラス・クエイド(コリン・ファレル)は、来る日も来る日も工場で働く日々に嫌気がさし、好きな記憶を売ってくれると評判のリコール社を訪れる。
しかし、突然、記憶の移植作業は中断され、警官隊が襲撃。
ところが自分でも知らなかった圧倒的な戦闘能力を発揮して、クエイドは警官隊を全滅させてしまう。
命からがら帰宅した彼に、今度は彼の妻ローリー(ケイト・ベッキンセール)が襲いかかる。
「果てして俺は何者なのか...。」


フィリップ・K・ディックの短編小説を原案に、以前にもアーノルド・シュワルツェネッガー主演ポール・ヴァーホーヴェン監督で映画化された事がある本作。
正直、シュワルツェネッガー主演の「トータル・リコール」は眠い映画だった印象しかないのだが、この作品は全くの別物。
CGIが可能にした近未来の世界観は、秀逸で、サスペンスと激しいアクションが息も衝かせず展開する。
主人公を始末しようと地獄の果てまで追ってきそうなケイト・ベッキンセールは、ほぼホラーの領域。
主演が、最初からアクションヒーローにしか見えないシュワルツェネッガーから、いかにも何処かに居そうな割と普通のオジサン => コリン・ファレルになった事で、ごく平凡な労働者だと思っていた男の隠された記憶が、次第に呼び覚まされていくというプロットも大いに盛り上る。

まるまるCGで作られた世界が、最新の大作アクションゲームのムービーを見ているみたいな印象になってしまうのも事実だけれど、ふと、あんなに昔に、CGもない中で「ブレードランナー」ってマジでよく作ったよなぁ..と思わず過去の傑作について考えてしまうほど、この作品の未来都市の描写やデザインは、古くて新しいエッセンスに溢れていて魅力的。
もうひとつの主役は、コロニーという街そのものだと言っても良いかもしれない。

設定も深く考えると説明が消化不良でよく分からないところがあったりするのだが、細かいことを気にする余裕すら与えないスピード感で、一気に押し切り、ちゃんと没入感を与えてくれるあたり、レン・ワイズマン監督の演出は、なかなかのもの。

久しぶりに、「世界観」を感じるSFを見た気分。壮大なSFの嘘に騙されに劇場へ行ってみよう。
夏らしい大作。つまり何も考えなくても楽しめる。大満足ですね。

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