1979年11月4日、イランの過激派がアメリカ大使館を占拠した。
混乱のなか6人が脱出、カナダ大使の私邸に逃げ込む。
残る52人の大使館員を人質にとったイラン側の要求は、アメリカの援助の下で圧政を敷き、自らは贅沢を極めた末にクーデターで失脚、癌の治療のためアメリカに入国した前国王パーレビの引き渡しだった。
6人の脱出が発覚し、捕まれば公開処刑されるのは間違いない。
国務省はCIAに応援を要請、脱出作戦のプロ、トニー・メンデス(ベン・アフレック)が呼ばれる。
トニーが閃いたのは、ウソの映画を企画し、6人をロケハンに来たカナダの映画クルーに仕立て上げ、出国させるという前代未聞の作戦。
トニーの知人の特殊メイクの第一人者で、『猿の惑星』でアカデミー賞に輝いたジョン・チェンバース(ジョン・グッドマン)が協力を快諾する。
ターナーCIA長官
「ほかに“マシな最悪案”は?」
ジャック・オドネル
「これが最高の最悪案。ズバ抜けています」
「事実は小説よりも奇なり」という諺を地で行く、凄い実話。
事件発生から実に18年後、当時の大統領クリントンが機密扱いを解除し、初めて世に明かされた前代未聞の人質救出作戦を主演も務めるベン・アフレックが硬派に映画化した。
石油の利権のために、トンデモな王様を政権の座に座らせてきたアメリカに対する憎悪が、そもそもの事件の背景にあることを映画は冒頭で、分かり易く説明する。
そして勃発した武装勢力と怒れる民衆による前代未聞のアメリカ大使館占拠事件。
大統領選を間近に控え、カーター大統領と政権は激しく動揺し、混乱する。
そんな中、前イラク政権の要職者の国外脱出を密かに支援してきた、CIAのプロフェッショナルが
立案した作戦は、カナダ人映画関係者に偽装して、偽物のSF超大作のロケハンを仕立て上げること。
あまりにも馬鹿馬鹿しく、壮大な嘘を成立させるため、国家予算を投じて偽の製作会社が設立され、豪華な製作発表まで行う。
この国家を挙げての大ボラの準備からして、心躍る。
危険を顧みず、長期にわたって彼らを匿ったカナダの友情。
映画界にCIAの協力者が居たことも、映画は実名で描き、脱出作戦の準備期間と、長過ぎる脱出までの72時間が緊迫感いっぱいに描かれる。
あまりにも成功確率が低そうな作戦の失敗を恐れた政権が、脱出直前に作戦中止を宣告してくるあたりから一気に観客のアドレナリンも全開状態に。
派手なアクションなど全くないが、熱いのだ。そして手に汗握るコン・ゲーム。
本当のヒーローは、その功績を人に称えられることもなく18年間沈黙を貫いた。
事件の真相が、政府によって情報開示されるまで。
奇想天外な真実と、プロフェッショナル達が織り成す、男のドラマ。
ぜひ、映画を超えた真実を劇場で体験してほしい。
エンドロール。
当時を回想するカーター前大統領のインタビュー音声が流れ、本当に本当にこれが実話だったことを改めて実感させられる。
そして劇中のイラクを描いたスチールと、記録写真や映像を対比させたり、メインキャストのスチールに並んで、実際の登場人物の写真が次々とスクリーンに映し出されて、驚くほど全てを可能な限り忠実に再現し、演出されていたことが判る。
この作品は俳優としても監督としても、ベン・アフレックの代表作の一つになることは間違いないだろう。
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