2010年6月13日日曜日

アイアンマン2/NARIZO映画レビュー

 自らが“アイアンマン”であることを明かしたトニー・スターク(ロバート・ダウニー・Jr.)だったが、胸のリアクターは彼の身体を徐々に蝕んでいた。政府は彼の勝手なヒーロー行為を問題視し、パワードスーツをなんとか取り上げようと画策。一方、スターク家に恨みを持つ天才ロシア人“ウィップラッシュ”(ミッキー・ローク)は、一撃で金属を真っ二つにするスーツを身に付けて復讐を誓う。その頭脳と破壊力に目をつけた、軍需産業大手のハマー社は、ウィップラッシュと手を組んで、トニーを追い詰めようとしていた。
そんな中、トニーの許に現れる謎の美女“ブラック・ウィドー”(スカーレット・ヨハンソン)。
そしてアイアンマンとウィップラッシュの対決が空前のスケールで展開する。



前作で「傑作だ、アメコミ原作だけど、マジおもしれえ!!」と俺を大興奮させた「アイアンマン」。
男の子心をくすぐるメカメカしい、パワードスーツ。主人公は金持ちでナルシストで天才だけど自己中心的で、素直になれない駄目オヤジ。既存のヒーロー像とは違った要素で、理屈なしに楽しめた魅力溢れるエンタテインメント大作になっていただけに、その続編と聞いて予告編の時点で、期待値が最高潮まで上がったのは仕方ないところだろう。

しかし、どんなに贔屓目に見ても、今回のシナリオは酷い。
この手の映画がテンポを失い、途中で中弛みして、眠気を誘うなんて最悪じゃないか。だらだらと色んなエピソードを絞りきれずに詰め込みすぎて、結局、ウィップラッシュの憎悪や復讐心も、新キャラクターの立ち位置も、トニーの苦悩も、煮え切らないペッパー(グウィネス・パルトロウ)との関係も、長かった割に未消化で、メリハリ無く、呆気なく、何だったんだこれという残念感漂う印象に。

映像的な興奮は、予告編に凝縮されていて、本編より予告のほうが面白いくらいだ。

今回の敵のウィップラッシュに至っては、ストーリー引っ張った割りに、恨みの深さもたいして伝わらず、びっくりするほど呆気なく勝負が付いてしまった気がする。演じるミッキー・ロークがムキムキだけどヨレヨレの酔っ払いにしか見えない有様で、悪役としての魅力に著しく欠けた気がするのも残念。
一方、新登場のスカーレット・ヨハンソンは、俺の眠気を一掃してくれた。いやぁ、「アイアンマン2」は彼女で俺の興味がギリギリ繋ぎとめられてた気がする。
スカーレットのエロオーラと独りマトリックスなアクションシーンを見れただけで、まぁ、良しとするか!と、割り切れるほど彼女のシーンのみ、見ていて飽きなかったのだが、これまた残念なことに登場シーンがそう、多くないんだな(笑)。
調べたら、スカーレット・ヨハンソンが演じてたブラック・ウィドーってのは、マーベルのコミックでは人気のある女スパイなんだね。

これは、まぁ、マーベルのヒーローが大集合して、敵と戦う「アベンジャーズ」へと繋げる伏線が今回も色々盛り込まれた結果のスカーレット・ヨハンソン登場という事の様なんだけど、そんな仮面ライダー大集合みたいな映画はどうでも良いから、まともな「アイアンマン」で楽しませて欲しいもんだ。











2010年6月12日土曜日

アウトレイジ/NARIZO映画レビュー

関東一円を取り仕切る巨大暴力団組織、山王会。池元組組長の池元(國村隼)は本家の加藤(三浦友和)から古参のヤクザ村瀬(石橋蓮司)との関係が本家に背くものだと叱責された。
だが、村瀬と池元は兄弟の盃を交わした仲。池元は、いつも池元からやっかい事を押し付けている傘下の大友(ビートたけし)に、カタチだけの喧嘩を仕掛けるよう命令を下す。
しかし、自体は次第に池元の思惑を超え、血で血を洗う収拾のつかない闘争と、ヤクザ社会の下克上へと発展していくのだった。


久し振りに北野ノワールが帰ってきた。三浦友和、椎名桔平、加瀬亮、國村隼、杉本哲太、塚本高史、石橋蓮司、小日向文世、北村総一朗、中野英雄...早々たるメンバーが全員悪党。
オンナ気ゼロの乾いた暴力と、窮屈で理不尽な縦社会の中で、もがく極道たちのドラマが展開する。
高見の見物で、命懸けのゲームを楽しむかのような会長、古い価値観と新しい価値観の世代交代、そして、我慢の限界にやってくる暴発性の衝動的暴力の連鎖。
キャラクターには誰一人として感情移入は出来ないが、ただ怒声が飛び交っている映画ではない。
全てのキャラクターが屈辱に耐え、我慢を重ねた末に、突然爆発する。この感情と暴力のリアルな描写を映像化することにおいて、日本で今、北野武の右に出るものは居ないだろう。

無常観が支配し、悪が栄える結末も示唆に富んだものになっているが、ドラマとしての完成度で見ると過去の素晴らしい作品群ほどの輝きは残念ながら無かった。
ヤクザの抗争劇として過去の北野作品と比較するなら、「Brother」よりは、かなりマシと言うところ。

それぞれ素晴らしい役者が一癖もふた癖もあるキャラクターを濃厚に演じており、その競演を見ているだけでも興味深い作品だった。
それだけに、もっとドラマティックな展開を期待してしまった俺は、欲張りすぎだろうか。