2011年5月29日日曜日

ブラックスワン/生理的に痛い精神自壊映画

バレエダンサーのニナ(ナタリー・ポートマン)に、「白鳥の湖」のプリマを演じるチャンスが訪れる。
だが演出家は優等生的な彼女が得意とする純真な白鳥の女王役だけでなく、邪悪で官能的な黒鳥を演じることも要求。そのプレッシャーに次第に押し潰されていく。
奔放な新人ダンサー、リリー(ミラ・クニス)が代役に選ばれたことで、さらに追い詰められたニナは、黒鳥を完成させつつも、精神的に自壊していくのだった。



「白鳥の湖」と言えば、あまりにも曲が有名なのでついつい知っている風な気になっていた俺だけど、あれ、あの話に黒い鳥なんて出てきたっけ?と不思議に思ってたら、なんと俺の頭ん中「醜いアヒルの子」と物語がゴッチャになっていた(笑)。

そんな残念な俺だけど、この作品が描くのはプレッシャーに押し潰されるプリマの話。その緊張感はバレエなんて知らなくても共感できる世界。

壊れていくナタリー・ポートマンの演技は凄い。ダンスのみならず際どいシーンも含め、かなりの体当たりだけど、確かに彼女自身の課題なのかと思っちゃうほど、どんなシーンでもあまり、官能的な感じが無い。

とにかく観客が共有させられるのは「不安感」。
縦揺れ激しい手持ちカメラが動きまくるカメラワークで冒頭から嫌な感じではあるんだが、本格的に病みはじめてからは指の付け根までササクレがめくれる妄想とか、生理的にイメージ可能な痛い描写のつるべ打ち。

観客も何が現実で何処までが妄想なのか、次第に分からなくなっていく。

とにかく、ナタリー・ポートマンの病みっぷりは半端ない。怖いくらいだ。
緊張でご飯が食べれなくなるとか、眠れなくなるとか、もうそういう次元じゃない。

黒鳥は拍手喝采で完成に向かうも、とにもかくにも破滅的。
これはこれで、デートで見ても見終えた後、ある意味話題が盛り上がりそうなレベル。
でも、スーパー・ネガティヴシンキングが主人公なだけに、自分のテンションが堕ちてるときにはこの映画、お奨めしない(笑)。

あと、ウィノナ・ライダーがすっかり年老いててビックリ。
まぁ、「レオン」に出てたナタリーがこんなに大人になるんだから、当然だけどね。


2011年5月21日土曜日

パイレーツ・オブ・カリビアン 生命の泉 /NARIZO映画レビュー

永遠の生命をもたらすという伝説の“生命の泉”をめぐり、キャプテン・ジャック・スパロウ(ジョニー・デップ)と史上最恐の海賊“黒ひげ”(イアン・マクシェーン)と、かつての恋人、女海賊アンジェリカ(ペネロペ・クルス)、英国海軍に寝返った宿敵バルボッサ(ジェフリー・ラッシュ)さらにはスペイン国王までが乗り出して、激しい争奪戦が繰り広げられる。

 ジャックが3Dになって帰ってきた。前作は馬鹿映画を愛する俺といえども、全く好きになれなかった呪われた駄作。それでも、続編といわれれば思わず劇場に足が向いてしまうのは、勿論、ジョニー・デップ演じるキャプテン・ジャック・スパロウの魅力によるところが大きい。

今回も、弱い脚本ながら3Dと彼の魅力でこれをカバー。前作に比べれば、はるかに楽しめる娯楽作品になっている。
特筆すべきは、人魚役で登場するスーパーモデルのアストリッド・ベルジェ=フリスベの美しさ。
俺は、高いこの3Dの映画チケット代の半分は彼女に、もう半分はジョニー・デップに捧げるね。(笑)


2011年5月19日木曜日

「岳 ガク」 小栗旬の当たり役! /NARIZO映画レビュー

世界中の巨峰を登り歩いてきた島崎三歩(小栗旬)は、北アルプスの山岳救助ボランティアをしながら山で生活する変わり者。北部警察署山岳救助隊の隊長・野田正人(佐々木蔵之介)を先輩として慕いつつ、遭難者の救助に手を貸している。そんな中、山岳救助隊に配属されたばかりの新人、椎名久美(長澤まさみ)は、能天気にさえ見える三歩の姿勢に反感を覚えつつも、遭難救助を通じて多くを学び、成長していくのだった。
ある日、北アルプスを爆弾低気圧が襲い、多重遭難が発生。雪山の脅威を前に、久美や三歩は果たして遭難者を救えるのか!


俺は山に登らないんだけど、山好きの呑み友達があまりに絶賛だったので、鑑賞。
確かに美しい空撮シーンの数々や、雲の上の頂、一面に広がる澄んだ空と広大なパノラマには目を見張るものがあった。

主人公の三歩を演じるのは小栗旬。
どんなに過酷な状況でも、どポジティヴに天然な雰囲気を発しつつ、冷静な判断力と、熱い情熱を秘めたこのキャラクターを好演。今後、当たり役として演じ続けていくことになりそうな予感漂う魅力的な演技に、心掴まれた。しかも、なんと彼、高所恐怖症だったらしい。

物語は、自然の美しさ、恐ろしさを淡々と描く。
遭難した人が亡くなる描写も多く、単に「ヒーローの映画」にはなっていない厳しさがある。
そんな中で、全く何で生計を立てているのか判らない三歩の存在には興味をかき立てられるものがあり、原作の漫画を読んでみたくなった。
そう。この作品は、映画を見て原作を読みたくなる効果を生んでいるのだ。珍しいことに。(笑)

しかし、なにより実はこの作品で一番、俺が気になったのは長澤まさみの熱演。
雪山なので、もこもこに厚着だし、彼女の役柄は恋愛するというより成長するところに重点を置かれたキャラクターだから、女優さんが美しく華麗にスクリーンを彩るようなシーンは皆無と言って良い。
しかし、泥まみれになりながら、必死で成長しようとするその姿もまた、実に魅力的だった。

山の美しさと恐ろしさ、その両面を描いて「山へおいでよ」と語りかけてくるこの作品。
しかし、山はやっぱり相当のココロの準備と装備が必要なのね。と、登山への心理的ハードルが、これのせいでまた、一段上がった気がする。
この景色の続きは、映画第2弾で味わいたい。