ある日、清掃中にパリのプレイエルへの出演依頼のFAXを見つけた彼は、かつての仲間を集めて偽のオーケストラを結成、ボリショイ交響楽団代表としてパリに乗り込むことを思いつく。
モスクワの片隅でかろうじて生計をたてている元団員のほとんどが、アンドレイの荒唐無稽な誘いを二つ返事で承諾。演奏曲はチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲、ソリストは若手スター、アンヌ=マリー・ジャケ(メラニー・ロラン)を指名。
パスポートも、ジプシーのヴァイオリン奏者が24時間で全員の偽造品を調達。遂に寄せ集めオーケストラはパリへと旅立った。彼等がジャケを指名した理由...そこには彼女の出生の秘密があった。
フランスで大ヒットしたクラシック音楽映画が日本に上陸。単館上映ながら。なかなかの評判という事で、劇場へ。
本家ホンモノのボリショイのオーケストラを解雇されたかつての団員が「成りすまし」で、パリに渡り公演を成功させてやろうという、非常に面白そうなストーリーに、コメディだよねと、興味をひかれた俺。
しかし、共産主義下のソビエトで体制に反抗した天才指揮者が、清掃夫に落ちぶれてるあたりとか、笑いがとれそうな不遇の設定は意外にも淡白に描かれ、その「時代」に対する理解が無いと、イマイチ共感できない感じの序盤。
かつての仲間をひとりずつ訪ねて、企みに引き込むシーンも、団員のキャラや背景を描くのに格好の展開に出来そうなはずが、イマイチ活かしきれず、中盤、パリに渡っての彼等オーケストラの自由奔放な、だらだら振りをそれこそ、だらだら見せられて、いったい何を見せたいんだこの映画は...と、その独特のペースに多少、やきもきさせられた。
しかし、若手の天才ソリスト、アンヌ=マリー・ジャケを演じるメラニー・ロランが出てきた辺りで、ぐっと面白くなっていく。とにかく、あまりにも彼女は美しく、続いて、何だかワケありな背景がありそうな展開をみせ、ダメダメだなと思っていた内容にぐっと興味が沸いてくる。
そしてラストの演奏シーンは、ここまでで呆れるくらいに低くなっていた自分のテンションの反動もあって(笑)、クラシックの演奏シーンでありながら泣きそうになるほどのカタルシスを感じさせてくれた。演奏家達が演奏を通じて心を通わせ、語らずとも全てが理解しあえてしまうという究極の演奏シーンが、台詞はなくても愛が語られているシーンが、そこにあった。
ああ..この15分のために俺は2時間を我慢してて良かったと、そう思える、それは素晴らしいシーンだった。
だったら、この手前の部分までのドラマをもっと、上手く作ってくれよと思わずには居られない演奏シーンの後、とってもシアワセに大団円を迎える。
終わってみれば、これってコメディではなかったねという音楽ドラマ(笑)。
「のだめ」も良いけど、クラシックの本場が作ったクラシック映画の凄み、ここにありという演奏シーンは、何度も言うけど必見。
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