2012年3月12日月曜日

戦火の馬/壮大なオトナの寓話

1頭の美しい馬が少年アルバート(ジェレミー・アーヴァイン)の農家にひきとられた。アルバートは馬を「ジョーイ」と名付け、かけがえのない友情を結ぶが、第一次世界大戦の開戦の機運は日増しに高まっていた。
やがて、戦争が始まり家計の助けに英国軍の軍馬として売られたジョーイは、フランスの戦地に送られる。


スティーヴン・スピルバーグ監督の新作の主役は「馬」だった。
ジョーイの手を離れて以降、馬の前に次々と現れる人間たちは、戦禍の中で散々な目に会いつつ、誰も彼もが姿を消していくが、そんな人間たちのエピソードは、この馬の前では刺身のツマみたいなものだ。
極力本物の馬を使って撮影したというこの作品において、馬は眼で語り、いななきや、ギャロップ、そのあらゆる動きがエモーショナルで、観客に感情を訴えかけてくる。その姿は、ときに神々しく、そして美しい。
誰よりも何よりも輝いていたのは「馬」だ。

描かれるのは軍馬にされた馬が数奇な運命を辿りながら元の飼い主の下へと戻る話。
人間にいい様に利用され戦場を必死に生き抜く馬が、迫力一杯で描かれる戦争を走り抜ける。

度々、馬の前に現れる人間たちは、戦争の中にあっても馬との触れ合いを通じて、「良心」に対して誠実に行動を取ろうとする。この話にリアリティなんて無い。
作品中に描かれるキャラクターを通じて「良心とは、こうあって欲しい」という願望が映像化された様な題材だ。

つまり、壮大なオトナの寓話。健気な馬に感動させられる話だ。

ところでこれ、元々、有名な舞台作品だったと知った。
それを聞くと戦場の広がり感や、馬をどんな手法で演出したものか、ステージ版が気になって仕方なくなってきた。

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