2012年7月17日火曜日

崖っぷちの男

実業家(エド・ハリス)から30億円のダイヤモンドを横領した罪で服役しているニューヨーク市警の元警察官ニック・キャシディ(サム・ワーシントン)が、脱獄。
高級ホテルの高層階の窓枠を越え、飛び降りようとする。
大勢の人が固唾をのみながらニックを見守る中、彼は要求を伝えるための交渉人としてニューヨーク市警の女性刑事リディア(エリザベス・バンクス)を指名する。


荒唐無稽だけど、アイディアの勝利。
まさに人生の「崖っぷち」に立たされた元警官が、自らの無実と、自分を陥れた者たちへの復讐を成し遂げようとする映画。

当初、共感不能。理不尽かつ身勝手にしか見えなかったニックの行動が、やがてどうやらある意味と、目的をもったものであると分かってくる。
次第に敵・味方も明らかになっていって、ストーリーは加速。一気に観客のキモチをつかんで、爽快感さえ感じるラストまで突っ走る。
映画的な嘘やご都合主義に一々揚げ足を取るのは忘れて、ここは作品のテンションに身を任せてしまおう。
何にしても、この手の作品に出遭えるのは、結構久しぶりだから。

地味だけど、出てくる役者は粒そろい。
「アバター」で主役を務めていたはずなのに、CGにばかり目を取られて多分、誰も覚えていないサム・ワーシントンが主役だから(爆)、多くの観客は変なイメージに引き摺られること無く、ニックの追い詰められ感に共感できると思うし、名優エド・ハリスを久々に拝めたのも嬉しかった。個人的にはニックの弟の恋人。セクシーラテン系姉ちゃんを演じてたジェネシス・ロドリゲスに釘付けでしたね(笑)。
物語で鍵を握る存在の女性刑事リディア(エリザベス・バンクス)が、終わってみるとイマイチ印象に残らなかったりするのは惜しいけど、脇役もみんな魅力的。

それにしても1950年代とか60年代のヒッチコックが世に送り出したようなサスペンス映画に、付けられていそうな邦題で、ひょっとしたら随分損してるんじゃないかな。この作品は。
なんか今のセンスでは、面白く思ってはもらえなさそうだよね。このタイトルじゃ。
それにヒッチコックの作品と比較できるほど、構成が素晴らしいわけでも、粋なわけでも無いし。惜しいところだらけの気がするけど、まぁ、ドキュメンタリー畑出身、アスガー・レス監督の長編デビュー戦だって言うならそこは暖かく見守って、今後の活躍に期待しようじゃないか。


期待せずに見れば吉の掘り出し物系作品だと思うので、「1時間半くらいでサクッと楽しめる面白い映画、なんか無いかなぁ。」
なんて時の暇潰しに見る分には、最適の作品です。


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