2013年5月1日水曜日

舟を編む

この作品、周りが薦めてくれなかったらノーマークのまま見過ごすところだった。
 2012年度の本屋大賞で第1位に輝いた、三浦しをんさんのベストセラーの映画化。
 辞書の編纂に携わる人たちを描いた、和やかで静かな人間ドラマ。
 もちろん、ノーマークだっただけあって原作未読のまま、劇場へ。

意外に思われるかもしれないが俺は昔から辞書が好きだった。
 iPhoneになって、電子辞書として「大辞林」のアプリを入れてから、学生の頃以来、隙間の時間に何気なく辞書を読んだりするようになった。
これが結構面白いんだ。

それでは辞書はどんな風に作られているのだろう?

 おそらく大変な作業なのだろうという想像までは何となくつくものの、そこで何が行われているのかを詳しく知る機会はこれまでになかった。
 いや、正確に言うと、便利で当たり前にある「辞書」の作り方がどんなものであるのか、知ろうという気にさえなっていなかったのかもしれない。

この映画は実に静かで緩やかな語り口の中で、そこに携わる人々と辞書作りの過程を魅力的なドラマとして魅せてくれる。
 石井裕也監督の演出はゆったりした時間の流れを作りながらも、決して退屈させない魅力にあふれている。
そして辞書一冊の完成に15年もの歳月が掛かるということ、それは編集者にとって半生を賭けたビッグプロジェクトであることを観客の多くはおそらくそこで知ることになる。 

月日の中で、どこか頼りなげでぶっきらぼうの馬締光也(松田龍平)は、立派な編集者に成長する。
そして15年の歳月の中で変わったもの変わらないものが描かれる。
かぐや(宮崎あおい)との出会いと、結婚、全くタイプの違う西岡(オダギリジョー)との親交。そして大切な人の死。


この作品は、ぶっきらぼうで言葉数が少ない松田龍平よりも、根に熱い想いを隠しながら軽妙な台詞回しで軽いキャラを熱演したオダギリジョーの果たした役割が大きかった。

完成へ向けていよいよ一体感を増す編集室。

 全く地味。全く地味な話なのに、胸が熱くなる。
辞書編纂がカッコよく思える。
日本語の美しさ、難しさ、そして何より言葉はどんどん進化を遂げていくという現実を再認識させてくれる作品になっている。

 

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