2009年11月22日日曜日

2012 / NARIZO映画レビュー

2012年。太陽系の惑星が直列し、マヤ文明の予言した終わりが始まろうとしていた。各国政府は密かに巨大船を製造し、限られた人間だけを脱出させる準備に着手。科学者達の予想を上回る速度で、それは起こった。
ロサンゼルスを皮切りに世界各地で、大地震や大津波、大洪水、大噴火が発生。
ロシアの富豪の運転手をして生計を立てている売れない作家のジャクソン(ジョン・キューザック)は、別れた妻・ケイト(アマンダ・ピート)と二人の子供を守るため、車を駆り、密かに準備された方舟を目指す。
崩壊する世界の中で、人間は、愛する者のために最後に何ができるのだろうか……。

今や映画業界イチの破壊者。ローランド・エメリッヒの最新作は、またもディザスター・ムービー。超ビックに予算を掛けて世界規模の「日本沈没」みたいな映画を世に送り出した(笑)。
地殻が溶けだしちゃった理由とか、そんなのは、真剣に追及してはいけない。SFとして唸れる要素は相変わらずゼロで、起こる事態に全く説得力は無いのだが、とにかく破格の予算2億ドルを掛けて描かれる崩壊の映像は笑っちゃうほどの凄まじさ。ただし、ワールド・トレードセンターひとつ倒壊しただけでも実際には物凄い土埃や砂埃が大変な規模で舞うという事実をテレビの前で固唾を呑んで見ていた、あの現実の記憶と比較すると、なんだか派手なゲーム映像を見たような気になってしまうのも確か。
つまり、痛さとか、悲惨さとかの無い、どこかアクション映画的なディザスター・ムービーなのだ。何処まで行っても「よく出来た創りもの」にしか見えない。この辺りが彼のCG演出の限界なのかもな。

さて、この作品で頑張る主人公はうだつの上がらない、普通の...いや、どちらかというと、あまりハッピーに人生を送れていない父親。演じるジョン・キューザックは、スター性全開の役者ではないし、これは良いキャスティングだった。それから、今回、彼の娘を演じた子役も中々良かった。群像劇として様々なキャラクターが当たり障りない感じで筋に絡んで来ては死んでいくわけだが、マーケティング的な配慮でハンパな日本のシーンを入れるのは逆効果だから止めた方が良いと、いい加減、この監督に誰か教えてやって欲しい(笑)。
まぁ、毎度のことなので、今度も出てくるかなと、期待していたには期待していたんだけどさ。ありゃないだろ(爆)。

そのほか脇役の話題として、ダニー・クローヴァーが大統領を演じる時代になったよ。凄いよな。
それから、久し振りに「ミッション・インポッシブル2」でヒロイン演ってた美貌のタンディ・ニュートンが出てるのもポイント高かった。

作品は、ジャクソンが必死に家族を救おうとする姿を軸に描くのと平行して、密かに進行する地球崩壊の日に向けてコツコツと準備する科学者や、官僚、政治家達の脱出計画を対比して見せる。

そして珍しく、最後の最後まで、ひとは「ひとらしく生きられるか」という真面目な問いかけを放ったエメリッヒ。
慣れないコトをされて、面食らった観客の俺。中途半端に描かれるヒューマンな展開。しかし、まぁ、これまでのエメリッヒ監督の「だって有名な都市とかを壊してみたかったんだもん」的、なスカスカディザスタームービーと比較すると、多少、何らかのメッセージを放とうとした事だけは、伝わってきた。

頑張ったね。エメちゃん。
いつもよりは、良かった気がするよ。馬鹿映画としても。


2009年11月21日土曜日

イングロリアス・バスターズ/NARIZO映画レビュー

“ユダヤ・ハンター”の異名を持つナチスのハンス・ランダ大佐(クリストフ・ヴァルツ)から逃れた少女・ショシャナ(メラニー・ロラン)は、パリの映画館主として身分を隠しながら復讐の機会を狙っていた。
一方、アルド・レイン中尉(ブラッド・ピット)らユダヤ系アメリカ人で組織されたナチス狩りの連合軍特殊部隊“イングロリアス・バスターズ”は、ナチスの占領地に潜伏し、その情け容赦ないゲリラ作戦でドイツ軍を恐怖に陥れていた。
そんな中、ショシャナの映画館でヒトラーはじめナチ高官を集めた映画のプレミア上映の話が持ち上がる。
警備責任者は、あのランダ大佐。会場には、“イングロリアス・バスターズ”の面々も潜伏を企てて...様々な思惑が交錯する中、運命のプレミアが幕を開ける!!



お帰り、タランティーノ!!
ブラッド・ピットというメジャー感いっぱいのキャスティングで、相変わらずの悪趣味バイオレンス・ファンタジーを展開してしまったワルノリ満載の無茶苦茶エンタテインメント。こんなのを世に出せるのは、あんた位だろと、別の意味で感心。

名優クリストフ・ヴァルツの醸し出す、緊迫感と笑いの絶妙なバランス。歴史的な設定をこの際、一切無視して突っ走る唖然のシナリオ。
マイク・マイヤーズなどカメオな豪華出演者に、ナレーションは、ホント、こういう企画に顔出すのが大好きなサミュエル・L・ジャクソン。
モチロン、タランティーノ映画お馴染みの全員が銃を突きつけあうメキシカンスタンドオフのシーンも登場。
相変わらず、ろくな結果にならないあたり、ファンを喜ばせるツボをちゃんと衝いてくれる。

おいおい、そりゃないぜ。
ヤリスギだろ、バカじゃね!!そんな感想こそ最大の賛辞。ブラピが主役だからって、決して、ミーハー系彼女とのデートに選んではならないQT印のB級エンタテインメント。
てか、俺は久し振りにこんなにぶっ飛んだブラッド・ピットが見られて、チョッと嬉しかったぜ。


2009年11月16日月曜日

SUS 3rd Anniversary PartyにJoi登場!

渋谷のSUSが今年で3周年になるのを記念したイベントに、今、クラブシーンで話題の驚異のファルセット・ヴォイス。Joi登場!って事で、盛り上がってきました。

これは、おいら撮影のライヴ動画。









そして、ご多分に漏れずラーメン食ってBAR行って朝までコースだったとさ。(爆)

2009年11月2日月曜日

沈まぬ太陽/ NARIZO映画レビュー

国民航空の労働組合委員長を務めた恩地元(渡辺謙)は、報復人事で不遇のビジネスマン人生を送っていた。一方、組合副委員長だった行天(三浦友和)は、出世街道を歩み、二人は対立していく。単独機の事故として史上最悪の死者を出したジャンボジェット機墜落事故を軸に、腐敗した企業の人間模様を描いた山崎豊子原作の長編小説の映画化。

 日本航空をモデルにした原作が物議をかもし、映像化の話が持ち上がっては頓挫してきた山崎豊子原作の長編「沈まぬ太陽」は、3時間20分を越え、間に10分間のインターミッションを挟むほどの大作になった。
原作発表の段階から、取材に偏向があるなどとして一時期、週刊新潮の機内取り扱いを止める等、激しく反発していたと伝えられる日本航空は、映画化にあたっても、あからさまに不快感を示していた様で、ビジネス的に相当な逆風の中で企画を成立させ、この尺に原作のエッセンスをまとめあげた製作陣の苦労が偲ばれる。

つまり、実話を基にしたフィクションとはいえ、それだけリアリティに溢れ、センシティブなテーマに切り込んだ作品。日本航空が再び経営の危機に瀕しているこの時期に、映画が公開されるというタイミングも結果として絶妙な感じがする。(笑)
テレビ局出資の「売らんかな」な邦画ではなく、売り辛いテーマに正面向かって取り組んだ作品としても興味深かった。
そして俳優女優陣は、まさしくオールスターキャスト。
とりたて主役の恩地を演じた渡辺謙には気迫を感じた。
見終えてどっと疲れるが、長いとか、退屈さは感じさせない見応えのあるドラマになっている。

御巣鷹山に国民航空の123便が墜落する展開を冒頭にもってきて、それを核に描かれる巨大企業の腐敗。
国が出資している航空会社であるが故の官僚や政治家との癒着。
安全と引き換えに疲弊していく労働環境や、現場など...3時間超の長尺でも描きたい事は多く、描き足りていない部分も多い。個人的にはカラチ〜テヘラン〜ナイロビと左遷されまくる恩地を描いた部分を少し削ってでも、墜落事故から国見会長による経営改革部分を厚く掘り下げて欲しい物足りなさは残った。

それでも、若松監督の情熱と多くのキャストの熱演に支えられ、単なる原作のエッセンスのダイジェストとは言い切れない、重厚なドラマになっている。
しかし、重厚すぎて久々映画にあたって疲れた感じ。
ハッピーエンドに慣れた観客が、3時間を越えて映画に没入しても、最後にご褒美的な爽快感や幸福感を与えては、もらえないのだ。沈まぬ太陽を魂に宿して不条理に対する恩地の戦いはまだ、続いている(笑)。

恩地が闘ってきた目に見え辛い企業や政治の不条理は、いよいよ、経済成長に陰りが見えているこの国において、表面化してきている様に思う。その空気感に薄々気付いているから、80年代を描いたこの作品に俺は「古さ」を感なかったのかもしれない。

考えさせられる作品になっている。



2009年11月1日日曜日

マイケル・ジャクソン THIS IS IT / NATIZO映画レビュー

2009年6月に急逝したマイケル・ジャクソン。1ヵ月後にロンドンで公演される事が決まっていた史上空前のスケールのライヴコンサート「THIS IS IT」を前に、死の数日前まで行われていたリハーサルを収録したドキュメンタリー。

全世界2週間限定同時公開と言いつつ、早くも延長が決まった(笑)話題の「THIS IS IT」を見てきた。
映画の日のシネコンは満員。常にキング・オブ・ポップとしてエンターテインメント業界に話題を提供し、君臨してきたマイケル・ジャクソンも、享年50歳を超えていただけに、実に幅広い年齢層が上映開始を待っていた。

この作品は2つの顔を持っている。
ひとつは、「THIS IS IT」という巨大なステージを創り上げていく、スタッフ、ミュージシャン、ダンサー、そしてマイケル・ジャクソンの姿を追ったドキュメンタリーという側面。
ゴシップ記事の数々で、半ば奇人扱いと言えなくも無かったマイケル・ジャクソンだが、ステージにかける完璧主義的な姿勢など、エンタテインメントの巨大プロジェクトが成立していくプロセスを追っているこの映像からはエンターティナーとしての彼の凄みが伝わってきた。

もうひとつが、ライヴステージを焼き付けたエンタテインメントとしての側面。
あくまで、リハーサル映像ではあるのだが、年齢を重ねても衰えることの無い歌やダンスを往年のヒット曲中心に聴けるのは、やっぱりファンにとってはたまらないと思う。

実際、アレだけ大掛かりな、装置を準備し、演出を重ねてきたステージが、公演目前のところで主役の死というアクシデントに見舞われ、日の目を見なかったわけだ。
ショー・マスト・ゴーオンというわけにはいかなくなった巨大ステージ。
しかし、「THIS IS IT」の総合演出を担っていたケニー・オルテガ自らが、このドキュメンタリーをディレクションしたことで、巨大プロジェクトの一端を別の形で再現させることに成功した。
この作品には、マイケル・ジャクソンが成し遂げたかったステージに対する想いが溢れているだけでなく、半分はケニー・オルテガの執念で構成されている様な気がする。

それでも、やっぱり、ライヴを映像として見ている限り、その場の鳥肌の立つ様な興奮や、空気感までは伝わってこないんだよね。正直、俺は曲の途中で何度も眠くなってしまった。
おそらくハロウィンの馬鹿騒ぎで疲れていたからではなく...。ちと、内容に対して長かったかな。

実際、そんなにマイケル・ジャクソンに強い興味を持っていなかった俺でさえ、これを生で見れたらさぞ、凄かったに違いないと残念に感じる程の映像だった事は確かなんだけどね。