2012年5月6日日曜日

「宇宙兄弟」/マーケティングの勝利?

「二人で宇宙飛行士になる」幼い頃に兄弟で交わした約束を果たし、宇宙飛行士となった弟・ヒビト(岡田将生)。会社をクビになり無職となった兄・ムッタ(小栗旬)は、ヒビトからの1本の電話をきっかけに、再び宇宙を目指し始める。
やがて日本人初にして最年少で宇宙へと飛び立ったヒビトをアクシデントが襲う..。


漫画原作の邦画が次々と公開されてはヒットする中、近年、稀に見る熱い漫画「宇宙兄弟」の実写化の話には、当初、大丈夫かよと思わずには居られなかった俺。

ムッタに小栗旬というのもイメージ沸かず、製作のニュースが届いた時点では「?」だらけだったこの作品も、テンションの上がる予告編が劇場で流れ始めると麻生久美子の「せりか」さんなど、脇役までふくめて「おお、なんか意外にもこのキャスティング、イメージ通りかも!」と、いつしか公開が待ち遠しくなる程になっていた。

実際、東宝映画が制作する久々の超話題作だったし、公開前にはテレビアニメの放送も日曜朝に始まったりして、最高の状況で初日を迎えたんじゃなかろうか。
その証拠に劇場はかなりの入りで、おそらく狙い通り、小さな子供連れ家族の姿を多く見掛けた。

宇宙開発の歴史をCGでコラージュしたカッコいいオープニングに始まり、全編、気合の画作りと本物の施設を借りてのロケーション撮影でこれまでの邦画には無いリアルで熱い宇宙の話が展開されていく....はずだった。


しかし原作漫画のいい部分、月に到着したヒビトを襲うアクシデントと兄弟愛、そして生還と、本来なら劇中で一番の見せ場になるはずだったくだりがすっぽり抜け落ち、130分近い尺でひっぱってきたものを最後の数分で強引にまとめあげようとした大森美香の脚本は、苦しみぬいた痕跡を感じる一方で、そりゃねえだろという感想を禁じえないものになってしまっていた。

最初から脚本ってああだったんだろうか?
森監督がやりたかったのは、本当にこれだったんだろうか?(笑)

結果として、途中で性急かつ乱暴にやっつけられた様な印象になってしまった作品は、終盤、まるで別の制作者によるもののようだった。

劇場の入りは、マーケティングの勝利だ。
でも、映画としては残念ながら破綻している。


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