2012年8月28日火曜日

プロメテウス

世界の古代遺跡の壁画から、共通する星と巨人の図案。時代も場所も異なるこれら古代遺跡で見つかったサインを、考古学者のエリザベス(ノオミ・ラパス)は人類創造の鍵を解くサインだと考えていた。
やがて、遺跡に描かれていた星の所在が明らかになり、謎を解くため、巨大企業ウェイランド・コーポレーションはプロジェクトを結成した。
エリザベスや恋人ホロウェイ、女性監督官ヴィッカーズ(シャーリーズ・セロン)、精巧なアンドロイドのデヴィッド(マイケル・ファスベンダー)らは宇宙船プロメテウス号に乗り込み、未踏の惑星を目指して出航する。


「エイリアン」の巨匠リドリー・スコット監督の新作は、なんと「エイリアン」の前日譚。
作品を謎に包んだプロモーション戦略の影響もあってだろうか、人類の起源などと大袈裟なテーマを振りかざしてはいるが、実はこの作品が「エイリアン」と関係が深いことすら、知らないであろう人は結構多い。
賛否が分かれるところだが、俺は、これはこれで賢明な判断だったのではないかと思っている。いや、むしろこの作品は世界観を「エイリアン」から借りてきているだけで、あれとは全くの別物と考えた方がしっくり来る出来栄えだと思った。
方々で辻褄が合わないと感じたり、デザインに違和感を感じたり、あの巨人なんだよとか、いろいろ突っ込みたくなってしまうのは、結局「エイリアン」の前日譚だと思って見ているからであり、これが独立した1本のSFホラー映画だと思えば、これにはまた少し違った印象を持っただろう。

それにしても、謎は謎のまま、理解不能なレベルで大袈裟に振りかざした「人類の起源」を結局うやむやにして終わらせてしまうこの作品。非常にもやもやする事は確かだ。
人類を創ったのかもしれない「エンジニア」と呼ばれる種族の目的が何だったのかも、よく分からず仕舞い。
しかし、スケール感、世界観、恐怖感、謎、全てにおいてよく出来た「雰囲気」の作品だ。
正直なところ、この中身で124分、興味を引っ張っる様な芸当は、巨匠でなければ難しかっただろう。
早くもこれの続編製作の話題が出ているが、俺は特に強く見たいと思わない(笑)。
嫌いではないが、誰かに絶対見た方が良いと薦められるような類の映画でもなかった。
映画としては、はっきり言ってガッカリした。

主人公の考古学者のエリザベスを演じたノオミ・ラパスは、「ドラゴン・タトゥーの女」のときの印象とはまた違って、可愛い女性らしさを感じさせるキャラクターになっている。それでいて、恐怖に蹂躙されながらも立ち向かい戦う姿は、まんま現代版のリプリー(「エイリアン」の主人公、シガニー・ウイーバーが演じたキャラクター)だ。
人間には、大きな野心があり、巨大企業のすることの裏には秘密の計画がある、そして戦う女性主人公...なんてのが、結局、「エイリアン」の世界観を貫いて語られてきた内容であり、簡単に言えば人間たちが自業自得で大変な目に逢うパニックホラーである。
そう考えてしまえば、3DやCGIで進化した映像以外、テーマ性に新鮮味なんてホントに全く無く、それでいて旧作品とは辻褄の合わない、単に、もやもやしたSFって事になってしまう。
なんで今、敢えてこの内容で撮ったんだ?そもそも製作の意図が分からない。ホント、止めとけば良かったのに(笑)位のことを「エイリアン」ファンだった俺に感じさせる、なんだか高尚な「雰囲気」のSFホラー。
あ、そうそう。シャーリーズ・セロン出てるよ。冷酷な役だったけど、綺麗だった。
この駄文に付き合った上で、それでも興味湧いた人は是非!!



2012年8月20日月曜日

アベンジャーズ

「アイアンマン」、「インクレディブル・ハルク」、「マイティ・ソー」、「キャプテン・アメリカ」この数年で公開されてきたマーベルのアメコミヒーロー映画は、実は全てこの作品を製作するために準備されてきたものだった。
「アベンジャーズ」とは、これらの個性的なヒーローが一堂に会して、地球の危機に際して力を合わせて立ち向かうアメリカの人気漫画を映像化したものだ。
観客に、それぞれのヒーローを知ってもらう意味で、各ヒーローを単独で映画化し、各作品のラストに、この「アベンジャーズ」への繋がりになるシーンを挿入して数年越しで観客に予告してきたわけだから、壮大な映画プロジェクトであることは間違いない。

海外では早くも物凄い観客動員で立て続けのヒット記録を樹立のニュースが飛び込んできているものの前述のヒーローについて多少なりとも知識や思い入れが無いと、はっきり言って「つまらない」映画だと思う。
言ってみればウルトラマン大集合とか、仮面ライダー大集合みたいなノリなのだが、富豪の自己中進派から、モンスターに変身する科学者、神からスパイに至るまで、チームを編成するキャラクターの世界観は見事にバラバラなので、これが許せなければ、まず「ありえない」映画だ。


それにストーリーは、追放された神が、異星人と手を組んで地球を襲うという、これまたとんでも話。
「マーベルって何?アイアンマンって何?」なんて女の子は勿論のこと、「アイアンマン」と「キャプテンアメリカ」は知ってても「マイティ・ソー」を見てないと何で神様出てくんの?と、クエッションの嵐だと思われるので、ホント、見る人を選ぶ映画だと思う。

この作品の正しい楽しみ方は、オタク系や馬鹿映画が大好きな連中と、酒飲んで、盛り上がるような見方だ。
だから、デートで行くならまだ、「トータル・リコール」とかの方がマシだ。
映画としては....続きとか、俺は、あまり見たい感じでは無かったね。(爆)




2012年8月12日日曜日

トータル・リコール

大きな戦争を経て正常な環境を失った世界。
人々に残された場所は、裕福なブリテン連邦と貧しいコロニーという2つの地域だけだった。
コロニーで暮らす工場労働者のダグラス・クエイド(コリン・ファレル)は、来る日も来る日も工場で働く日々に嫌気がさし、好きな記憶を売ってくれると評判のリコール社を訪れる。
しかし、突然、記憶の移植作業は中断され、警官隊が襲撃。
ところが自分でも知らなかった圧倒的な戦闘能力を発揮して、クエイドは警官隊を全滅させてしまう。
命からがら帰宅した彼に、今度は彼の妻ローリー(ケイト・ベッキンセール)が襲いかかる。
「果てして俺は何者なのか...。」


フィリップ・K・ディックの短編小説を原案に、以前にもアーノルド・シュワルツェネッガー主演ポール・ヴァーホーヴェン監督で映画化された事がある本作。
正直、シュワルツェネッガー主演の「トータル・リコール」は眠い映画だった印象しかないのだが、この作品は全くの別物。
CGIが可能にした近未来の世界観は、秀逸で、サスペンスと激しいアクションが息も衝かせず展開する。
主人公を始末しようと地獄の果てまで追ってきそうなケイト・ベッキンセールは、ほぼホラーの領域。
主演が、最初からアクションヒーローにしか見えないシュワルツェネッガーから、いかにも何処かに居そうな割と普通のオジサン => コリン・ファレルになった事で、ごく平凡な労働者だと思っていた男の隠された記憶が、次第に呼び覚まされていくというプロットも大いに盛り上る。

まるまるCGで作られた世界が、最新の大作アクションゲームのムービーを見ているみたいな印象になってしまうのも事実だけれど、ふと、あんなに昔に、CGもない中で「ブレードランナー」ってマジでよく作ったよなぁ..と思わず過去の傑作について考えてしまうほど、この作品の未来都市の描写やデザインは、古くて新しいエッセンスに溢れていて魅力的。
もうひとつの主役は、コロニーという街そのものだと言っても良いかもしれない。

設定も深く考えると説明が消化不良でよく分からないところがあったりするのだが、細かいことを気にする余裕すら与えないスピード感で、一気に押し切り、ちゃんと没入感を与えてくれるあたり、レン・ワイズマン監督の演出は、なかなかのもの。

久しぶりに、「世界観」を感じるSFを見た気分。壮大なSFの嘘に騙されに劇場へ行ってみよう。
夏らしい大作。つまり何も考えなくても楽しめる。大満足ですね。

2012年8月7日火曜日

ダークナイト ライジング

ゴッサム・シティを襲撃したジョーカーを倒したものの、ハービー・デント検事殺害の罪をかぶり、姿を消したバットマン。その8年後、再びゴッサム・シティに戻ってきたブルース・ウェイン(クリスチャン・ベイル)は、街の破壊をもくろむ新たな強敵ベイン(トム・ハーディ)を前に、バットマンとして対峙する……。

トラウマを持ったカネ持ちの生身のおっさんが、カネにモノを言わせて作った凄いスーツと戦闘メカの数々を駆使して、変態な強敵と闘う...。
そんなバッドマンは以前にも実写映画がシリーズ化されていたことがあったわけだが、ぐっとダークにオトナな「バッドマン」を再構成したクリストファー・ノーラン監督のシリーズは、前作「ダークナイト」で悪役ジョーカー(ヒース・レジャー)の狂気が、この手のアメコミ映画に反応しないような映画ファンをも興奮させ、さらに直後にヒース・レジャーが急死してしまった事から、伝説化した。

 そんな前作で、あまりにも悪の華が強い薫りを放っていただけに、そこらの悪役と、主人公のトラウマを持ったカネ持ちの生身のおっさんでは、到底パワー不足になるだろうと思っていた。
そもそもカネ持ちのおっさんは、なんか共感され辛い。
しかし、この作品では、まさに先の戦いでボロボロになって引き篭もっているブルース・ウェインが、再び立ち上る姿が主題になっている。
策略で全ての財産を失い、満身創痍、絶望の底へ落ちた男が、立ち上がり、這い上がって闘う、まさに「闇の騎士が立ち上る」ストーリー。
観客も共感できるヒーローとなってバットマンが、本当の意味で主役を取り戻した。

ジョーカーほどの強いインパクトは残念ながら無く、尺の割には映画だけでキャラクターの魅力が描ききれていないようにも思えた今回の悪役ベインだが、ちょっと想像を超えるような護送機からの空中脱走劇に始まり、見せ場は盛り沢山。
相変わらず長い(165分もある)このシリーズの尺を長いとまるで感じさせないのは、ベインの暴れぶりの賜物だろう。
更には旧シリーズのミシェル・ファイファーを超えたなと個人的には感じた、アン・ハサウェイのセクシーなキャット・ウーマンの登場。最後の最後まで美味しいところを横からさらう活躍は見ていて小気味よい。

何より、ラストシーンはシリーズ最終作を飾るに相応しく、満身創痍のヒーローに安息の時を与え、なんとも幸せなキモチにさせられた。
映像の完成度は、予告編の段階で言わずもがなだったが、ドラマとしてもクリスチャン・ベイルのバットマンにとって完璧な完結編だった。