2013年1月20日日曜日

テッド

どうしようもなく下品で低俗で、でも可愛くて、愛せるコメディ映画の登場だ。

1985年、ボストン郊外。
 誰にも相手にされない孤独な少年・ジョンは、クリスマスプレゼントでもらったテディベアと、本当の友人になれるよう天に祈りを捧げる。

 「本当に、君とおしゃべり出来たらいいのに」

 そんなジョンに奇跡が起きて、ティディベアに命が宿ると言う馬鹿馬鹿しくも美しいファンタジーは冒頭だけ。
27年後。
 ジョン(マーク・ウォールバーグ)は、中学生的ノリの抜けないダメ男に成長、テッドも下品なジョークと女の事で頭がいっぱいの中年テディベアに成り下がり、4年間付き合っている彼女ローリー(ミラ・クニス)から、自分かテッドのどちらかを選ぶよう迫られてしまう。 

設定を考え、監督とテッドの声の吹き替えまでこなしたのは、テレビ業界のバラエティ番組の製作出身のセス・マクファーレン。
中学生的なノリがいつまでも抜けない、主人公に彼と同世代のマーク・ウォールバーグを起用したのも、絶妙のキャスティングだ。
なんせ、彼は今でこそ俳優として成功しているけど、俺が高校生の頃は、白人系の不良少年ラッパー「マーキー・マーク」として、ヒットを飛ばしていた、ちょっとイタいアイドルだった。
 今や封印している過去のそのキャリアについても、さりげなく作中でネタにしつつ、やや全体的にタルみの気になる駄目独身中年を演じる彼に、これまでにない親近感を覚えた、彼らとほぼ同世代でかつ独身の俺(笑)。

 「これは、もしかして俺達の映画なんじゃないか?」 完全に女子から呆れられる方向感のお馬鹿で中学生的なノリに、不覚にも俺は同じ匂いを感じてしまった(笑)。
 つまりこの作品、監督、主演、そしてテッドと同じ現在30代の男性観客なら、オタクな部分も含め、大受け出来るネタが散りばめられている。
一般的に女子は実年齢より精神年齢高いと思うけど、脳内が恒常的にパーティーなダメダメ30代の所業を「しょうがないわねぇ」と許容してくれる精神的にオトナな女子の存在は、実に大きいぞ。
 生きてるティディベアが居たとして、それ以上に大きいぞ!!とこの作品は、俺達を諭す(笑)。

 しゃべるティディベアの「テッド」は、男が多かれ少なかれ持っている、中学生的な部分やオタクな部分のメタファーだけど、それを自分の個性としてちゃんと認めつつ、責任あるオトナとして成長しようとするジョン。
これは、ある意味、第二の青春映画なんだ。(爆)

 「テッド」は、ビジュアルが可愛いから、結構、女性の観客も多かったけど、下ネタ満載だし、人によって笑いの許容範囲は違うから、デートムービーとしては微妙かもしれない。
 (これを一緒に馬鹿笑いしてくれる彼女ってのが居るなら、素敵だと思うけどね)
 出来れば30代の酔っ払いな仲間たちと、酒を片手にワイワイギャハギャハ、楽しみたい作品だ。
 

2013年1月14日月曜日

ゲキ×シネ 髑髏城の七人

芝居を劇場のスクリーンでという趣向の「ゲキ×シネ」初体験。
 正直なところ衛星放送なんかでやってる「演劇」の収録プログラムを劇場で見るだけだよね?
的な認識しかなかった俺。

 たまたま今回公開されるのが興味があった劇団☆新感線の2011年版「髑髏城の七人」で、しかも元iMAXシアターだった品川プリンスシネマのシアターZEROでのスクリーン上映だったから興味が湧いた...だけ。

 だが、俺はこの「ゲキ×シネ」ってフォーマットをナメてた。 

お茶の間で、ゴロゴロしながら見られる録画された「演劇」とそれは一線を画している。
そもそも照明の落ちた空間で、集中して一つの作品に向き合うと言う環境はお気楽な茶の間スタイルとは異なる。
多数のカメラで劇場では不可能なアングルから撮影された映像は、観劇とはまたちがった価値を提供している。
リテイクの利かない演劇ならではの一発収録。
 しかしながら、映画を見ているかのようなスピーディーで、ダイナミックに繰り広げられる殺陣。

 演劇でありながら映画的演出に長けた「劇団☆新感線」の代表作を映画でありながら「演劇」的に鑑賞する面白さ。
浮き上がる血管、飛び散る汗、血糊、ライブ感、緊張感が漂う上映時間179分。
インターミッションが15分。
つまり... 気軽には見られない。
これは芝居を見に行くのと同じ覚悟と姿勢で楽しむフォーマットなのだ。

 映画やドラマと言った映像でのイメージが強い人にとっては小栗旬や森山未來の舞台役者としての凄みを感じて、彼らに対する印象が変わるかもしれない。
 若手の女形役者 早乙女太一の妖艶さ。このメイン3人に加えて、小池栄子や仲里依紗が、舞台空間を彩る。

 映画だとか演劇だとかと言うつまらない制約を超えて、これは一級のエンタテインメント。
 今なら言える、「ゲキ×シネ 髑髏城の七人」。
そこには劇場で鑑賞するのとは別物の興奮が待っている。
 見られるうちに、大スクリーンで見なくちゃ、これは損だ。

飛び出すわけでもないのに当日料金2000円超えるけど(笑)、五感爆発のキャッチコピーは伊達じゃなかった。
 

96時間 リベンジ

かつて拉致された娘を救うべく、アルバニア系犯罪組織に単身戦いに挑んだ元CIA工作員ブライアン・ミルズ(リーアム・ニーソン)は、休暇で家族の絆を取り戻そうとしていた。
 しかし休暇先のイスタンブールでは、復讐を誓うアルバニア系犯罪組織が待ち構えていた。
 元妻と娘の両方を捕らわれたブライアンは、再び単身で犯罪組織に立ち向かう。 

心配のあまり、娘にGPSを付けてしまう様な元工作員の父親をリーアム・ニーソンが熱演。
 リュック・べッソンがプロデュースと脚本、監督はオリヴィエ・メガトンという「いつも」の組み合わせで「いつも」通りのちょっと大味なアクション映画。
 さらわれる娘も奥さんも美人ではないが、観客はリーアム・ニーソンに釘付けだ。
この映画でのリーアム・ニーソンの強さと行動力は、スター・ウォーズで演じたジェダイの騎士をも上回る。
 まさに家族のためになら法律もルールも手段も選ばない、最強にして最凶パパ。
 肉体派アクションスターではない、見た目、落ち着いていそうな普通のおじさんリーアム・ニーソンが、工作員仕込みの物凄いスキルやテクニックで単身、敵を追い詰めていくというところが最大の面白さなのだ。
そういう意味では、地味だけど企画の勝利なんだよな、このシリーズは(笑)。
美しい市街でのカーチェイスや格闘シーン。
ゲリラ的に撮影されたスピード感。
 舞台となったイスタンブールの魅力が荒唐無稽な作品の価値を2割くらい上げてくれている気がする。
 このあたり、アメリカ映画だけど、主要な製作メンバーがヨーロッパ組ってだけのことはある。
 92分と言う尺も、この手の何も考えずに楽しむ映画としてはちょうど良い。
 なんか久しぶりにベッソンのプロダクション「ヨーロッパコープ」絡みで、面白いと思える映画を見た気がする。

 ただし「大味」だけどね。