2014年1月18日土曜日

頭から植物を生やした女子高生が、いじめっ子に復讐する驚愕のホラー『華魂』の衝撃!

新たな学園復讐ホラー誕生か?


いじめられっ子が、自分をイジメ抜いたクラスメイトに壮絶な復讐を果たすホラー映画。
主役は美少女。
そう聞くと、まず頭に浮かぶのは、怒りによって、コントロール不能なまでになった少女の爆発的超能力が卒業パーティーの会場を惨劇の舞台にかえた「キャリー」だろう。
昨年公開されたリメイク版の主演 クロエ・グレース・モレッツ…可愛かったなぁ。
あれから約3ヶ月。
邦画でも、イジメ抜かれた美少女が、自分をイジメ抜いたクラスメイトや教師に壮絶な復讐を果たすホラー映画が公開されると聞いて、一足早く鑑賞してみた。
監督は、ピンク映画出身でエロと芸術を追求してきた佐藤寿保。
音楽は昨年、NHKの朝ドラ「あまちゃん」ので脚光を浴びた大友良英。
それだけでも、ただものではない匂いが漂うその作品のタイトルは、『華魂』(HANA-DAMA)という。

どこか昭和のニオイ漂うイジメ描写

ロッカーに閉じ込められて、お漏らししちゃったり。

トイレに閉じ込められて、ホースで上から放水されちゃったり。

変態教師から男子生徒が女装を強要されたり。



なぜか、イジメのノリは完全に昭和だ。
出てくるオトナのキャラクターには誰一人として、まともな人間はおらず

度重なる暴力に、居場所が無くなった三人のいじめられっ子は、ついに暴走してしまう。


唖然の展開!昭和の特撮恐怖映画×エログロ世界

嵐のようなイジメに、ボロボロになった主人公の瑞希(桜木梨奈)は、夜の街を彷徨い、突如として毒々しい花 “華魂”に憑依される。

大事なことなんでもう一度言おう。
突然、毒々しい「花」が、主人公にとり憑き、瑞希は復讐の植物女子高生と化すのだ!


くわっ!!
「キャリー」が超能力なら、こっちはエコに「植物」だ!!
昭和な雰囲気の荒廃した学園ドラマから一転、ここで一気に昭和の東宝特撮ホラー映画の様な懐かしいノリと、エログロによるハイブリッドな世界が展開。
なんで?どうして?と、その展開に驚く俺をおいてけぼりにして、学園は悲鳴に包まれた!!



新たな恐怖誕生!

日常にひそむ狂気と倒錯のエロチシズムをハードな映像で描き続け、『乱歩地獄・芋虫』(出演:浅野忠信、松田龍平、大森南朋)や『名前のない女たち』など、海外映画祭でも高い関心を集める佐藤寿保監督の最新作。
頭から植物が生えてる女子高生は、いろんな意味で夢に出るインパクト!
『華魂』は、1月18日に東京新宿の新宿ケイズシネマで封切りになるのを皮切りに、静岡、愛知、大阪で順次公開の予定だ。

■『華魂』公式サイト

2013年5月1日水曜日

ラストスタンド

アーノルド・シュワルツェネッガーの「ターミネーター3」以来10年ぶりの主演復帰作。
 それだけで、もうどうであれご祝儀鑑賞だ。映画の日だし。(笑) 

シュワルツェネッガー演じるオーウェンズは元凄腕刑事ながら、多くの仲間を失った刑事生活に疲れて、平和な国境のど田舎で保安官として余生を過ごしている。
そこに脱走した麻薬王と、その手下どもが現れて、孤立無援の田舎町で、頼りない地元の保安官と多勢に無勢の闘いを繰り広げる。

 かつては辣腕だった老保安官が立ち上がるというプロット自体には、何の新鮮さも無いが、まぁ、それはいい。
しかし、その設定に真新しさは無くても、幾らでも面白いアイディアを用いることは出来たはずだ。

 しかしどうだろう、この余りにも大味な内容は。
 誰ひとりとして、魅力を感じられるキャラクターがおらず、シュワルツェネッガーと対峙する麻薬王にも、なんら悪の魅力が無い。
アクションにもまるで新鮮味はないし、FBIの指揮官を演じたフォレスト・ウィテカーなんて、いい役者なのにただの無能なデブでしかない。
決してつまらなくはない。
 退屈ではなかったし、眠くなったりもしなかった。
しかし、二度見たいと思えるような愛せる映画ではなかった。
どうせご祝儀鑑賞だから、たいして期待してなかったというのもあるが、これは、シュワルツェネッガーの復帰作という前振りに助けられただけの小品だ。
 最近の邦画の出来が、以前にも増して上がってきているだけに、見た目だけ派手で大味な作品の見劣り感を半端なく大きなものに感じるのだ。

と、思ったら監督は、キム・ジウンじゃないか。
 彼の作品は、韓国らしい義理人情を感じるものや、韓国製西部劇の「グッド・バッド・ウィアード」みたいに挑戦心にあふれたものが多かった。

しかし、この作品には人情も真新しさも無い。
ただ、どこかで見たような薄っぺらなパーツをかき集めて作ったようなアクション映画だ。
そんな彼の新作が、人生たった一度でもう充分のつまらない暇つぶしにしかならないだなんて、なんだか、余計に残念だ。
 

藁の楯

孫を無残に殺された経済界の大物。
逃亡中のその殺人鬼を殺したら10億円を支払うという新聞広告に殺気立つ人々と、自首してきた彼を警視庁まで移送する任務を受けたSPの息詰まる攻防戦。

 見ているこちらが殺意を抱きたくなるくらい(笑)、何処までも屑の様な殺人鬼 清丸国秀を藤原竜也が熱演。
彼を守る任務にあたるSPに大沢たかお、松たか子。
同行する警視庁の捜査一課刑事に岸谷五朗、永山絢斗。
引渡しもとの福岡県警刑事に伊武雅刀。
孫を殺され、清丸殺害に賞金をかけた経済界の大物を山崎努が怪演。

警察の内部含め、国民の誰もが信用できない状況の中、それぞれ心に傷を持つ刑事やSP達が、守る価値の見い出せない屑のための楯となり、一時も目を逸らせないドラマが展開する。

 この豪華演技陣を纏め上げ、邦画では類を見ない規模の市外ロケを敢行したのは鬼才・三池崇史監督。
 開通前の高速道路を警察車両の護送車列で完全封鎖、新幹線の車内・駅のシーンは台湾ロケで実現。
名古屋市内を封鎖してのラストシーンなど、本物の街と車両を使った逃走攻防劇が演技の火花散るドラマをより一層盛り上げる。
 製作・配給はワーナー。
 まさに世界標準、オリジナリティの強いサスペンスエンタテインメントに、唸らされた。 
誰も信じられない、驚愕と興奮のストーリー。
 さらに、びっくりしたのは、原作があの懐かしい「ビーバップ・ハイスクール」の木内一裕の小説だったということ。
 ネタばれは出来ないので、多くは書けないが、これはこのGWに是非、劇場で見ておくべき映画だ。
 

図書館戦争

国家によるメディア検閲が正当化された日本を舞台に、「知る権利」や「本を読む自由」を守るため図書館が自衛して国家権力と攻防を繰り広げる。

 有川浩のベストセラー小説が原作。
少し前にはアニメ化もされている人気の作品を「GANTZ」を実写化した佐藤信介監督の手で映画化したのがこの作品だ。

 資料収集の自由、資料提供の自由、利用者の秘密保持、全ての検閲への反対。

劇中に登場する宣言は、1954年に図書協会が定めた実際のもので、原作の有川浩はこれを命懸けで図書館が守ったら...という発想でこの物語を生み出したのだという。

 「本を焼く国家はやがて人も焼く」という台詞が出てくるのに代表されるように、全く架空の世界の物語でありながら、人々の無関心がやがて気付かぬうちに当たり前の自由を奪い、権力者の都合のよいような全体主義的な社会になってしまうかもしれないという強烈なメッセージに貫かれたこの作品は、思いの外、見応えがあった。

 原作の有川浩は自衛隊を中心に物語を描く事で有名な若手作家だが、むしろ国家権力の代表ともいえる自衛隊が、図書館を守る「図書隊」という架空組織を描くために映画に全面協力して、ただならぬ迫力をスクリーンに与えていることに少しばかり驚いた。
 しかしこれは、自衛隊が原作者の企画に好意的だという以上に、図書隊の信条が「専守先制」という自衛隊の根幹姿勢と立場を同じくしているからという理由が大きいかもしれない。

 とにかく邦画としてはかなり派手な戦闘シーンが展開され、この架空の世界にリアリティを与えている。 
加えて、主役の笠原を演じる榮倉奈々の健気さというか、図体のでかい体育会系純情乙女っぷりが半端なく可愛い。
 映画の日に見たとはいえ、これだけでもう1,000円の価値はあった(笑)。
 いまやジャニーズきってのアクション俳優 岡田准一の演じる堂上とのコンビは、微笑ましくもあり、「ベタ甘」な世界が見事に映像化されていた。

 終わってみれば、このコンビでの続編を見てみたい気になった。
だって榮倉奈々、可愛いんだもん。
 

舟を編む

この作品、周りが薦めてくれなかったらノーマークのまま見過ごすところだった。
 2012年度の本屋大賞で第1位に輝いた、三浦しをんさんのベストセラーの映画化。
 辞書の編纂に携わる人たちを描いた、和やかで静かな人間ドラマ。
 もちろん、ノーマークだっただけあって原作未読のまま、劇場へ。

意外に思われるかもしれないが俺は昔から辞書が好きだった。
 iPhoneになって、電子辞書として「大辞林」のアプリを入れてから、学生の頃以来、隙間の時間に何気なく辞書を読んだりするようになった。
これが結構面白いんだ。

それでは辞書はどんな風に作られているのだろう?

 おそらく大変な作業なのだろうという想像までは何となくつくものの、そこで何が行われているのかを詳しく知る機会はこれまでになかった。
 いや、正確に言うと、便利で当たり前にある「辞書」の作り方がどんなものであるのか、知ろうという気にさえなっていなかったのかもしれない。

この映画は実に静かで緩やかな語り口の中で、そこに携わる人々と辞書作りの過程を魅力的なドラマとして魅せてくれる。
 石井裕也監督の演出はゆったりした時間の流れを作りながらも、決して退屈させない魅力にあふれている。
そして辞書一冊の完成に15年もの歳月が掛かるということ、それは編集者にとって半生を賭けたビッグプロジェクトであることを観客の多くはおそらくそこで知ることになる。 

月日の中で、どこか頼りなげでぶっきらぼうの馬締光也(松田龍平)は、立派な編集者に成長する。
そして15年の歳月の中で変わったもの変わらないものが描かれる。
かぐや(宮崎あおい)との出会いと、結婚、全くタイプの違う西岡(オダギリジョー)との親交。そして大切な人の死。


この作品は、ぶっきらぼうで言葉数が少ない松田龍平よりも、根に熱い想いを隠しながら軽妙な台詞回しで軽いキャラを熱演したオダギリジョーの果たした役割が大きかった。

完成へ向けていよいよ一体感を増す編集室。

 全く地味。全く地味な話なのに、胸が熱くなる。
辞書編纂がカッコよく思える。
日本語の美しさ、難しさ、そして何より言葉はどんどん進化を遂げていくという現実を再認識させてくれる作品になっている。

 

2013年4月27日土曜日

アイアンマン3

“アベンジャーズ”の戦いから1年。
アイアンマン・アーマーを身にまとい、世界平和のために戦う、億万長者にして天才発明家のトニー・スターク(ロバート・ダウニー・Jr.)は、突如 史上最悪のテロリスト“マンダリン”からの襲撃を受ける。 

アイアンマン」の魅力。
それはなんと言っても、おとなげないオヤジが主人公で、しかもハイテクのアーマーを着なければ、俊敏に動けるものの限りなく生身のオッサンだというところだ。

 トニー・スタークには才能はあるが、超能力はない。
傷つくし、間違うし、不道徳なこともする。
 しかも本作では激しい戦いの末、ストレス障害に陥っていて、精神不安定。
そんな、とにかく人間臭いオヤジキャラは、いまや、ロバート・ダウニー・Jr.を代表する当たり役になっている。 

本作ではトニー・スタークが全てを失い、悪態をつきながら再び立ち上がる姿が描かれる。
その背景にあるのは、過去の因縁。
テロや戦争がメディア化したり、劇場化している現代社会を強烈に皮肉ったストーリーが展開される。

今回、屈折した悪役をガイ・ピアースやベン・キングズレーが好演。
シリーズを通してトニーの恋人ペッパーを演じるグウィネス・パルトロウは、歳を重ねるごとにチャーミングになって行ってる気がするし、ドン・チードルはもしかして、少し痩せた?

 派手で馬鹿なノリ、夥しい数のアーマーが登場する派手なラストまで、一気にぶっ飛べるゴールデンウイークには最良のエンタテインメント。
もちろん、マーベル映画のお約束、エンドロール後にも1シーンあるので、劇場では焦って席を立たないように。
 映画会社のキャッチコピーは「さらばアイアンマン」。
そんな馬鹿な!!と突っ込みいれつつ、すっかり夢中にさせられた1作目のテンションが俺の中で再び蘇ってきた。
 ホントにこれでシリーズが終わることは無いと思うが、一つの節目の作品になることは間違いないだろうね。
 

2013年4月20日土曜日

リンカーン

リンカーンと言えば奴隷解放を実現させたアメリカの自由を象徴する存在。

 暗殺されたんだよな、子供のころにお気に入りだった東京タワーの蝋人形館は何故かリンカーンの暗殺シーンが再現されてたから、子供心にインパクト絶大だった。
あれ、まだあるのかな?

南北戦争ね...アメリカの内戦でしょ?
 改めて考えると、リンカーンの名前は知っていても、当時のアメリカについては知ってるようで、意外と知らないことに気付かされる。
 しばらく見たい映画がなくて、劇場から足が遠ざかっていた間に、自宅に届いていたBlue-layで「リンカーン秘密の書」を見返して、この作品の公開に備えてはみたものの、リンカーンがヴァンパイアハンターだったなんて設定の作品が、当時についての理解を深める助けになるはずもなく。(笑)
不勉強のまま久しぶりに硬派な新作と向かい合う事になった。

 この作品は、スティーブン・スピルバーグ監督によるアメリカ第16代大統領、エイブラハム・リンカーンの伝記映画だ。
 と言っても、「貧しい家の男が苦学の末、アメリカ大統領になった」なんていうありがちな説教臭い偉人伝にはなっていない。
 奴隷制度を廃止する法律、米国憲法修正第十三条を可決させるまでの苦悩の日々を中心に、政治家たちの思惑が交錯する政治劇としてそれは描かれる。

 ちょっと想像すれば理解できる話だが、イマイチ、ピンと来ていなかった当時の事実をこの映画は、現代の観客に突きつける。
 例えば、当時の黒人奴隷は、立派な財産だったと言う事実。
 奴隷解放は、ある意味、奴隷の持ち主から財産を取り上げるという政治運動だった。
そして大規模農園の安価な労働力として黒人奴隷を大量に働かせていた南部の政財界にとって、それは許されるものではなかった...なんてコトが政治家たちの背景に見え隠れする。
 奴隷制度は好ましくないと、腹では理解していても、自らの政治基盤や経済基盤が、その制度のうえに成り立っている政治家たちの葛藤も描かれる。
 それから解放された黒人たちが、街にあふれたら大変だと言うような、漠然とした恐怖。

 リンカーンが法の下での人種平等をなんとか法律の下に宣言しても、人間としての平等は認めることが出来ない社会。
彼らの参政権はおろか、女性に参政権を与えるなんてことは、輪を掛けてとんでもないと言うような価値観の時代の物語なのだ。
 それだけに可能であれば、ほんの少しでも「南北戦争」について知識を仕入れてから作品と向き合ってみるコトをお奨めしたい。
 それだけで数倍、この作品は興味深いものになるはずだ。 
物語の中に南北戦争のシーンもあるにはあるのだが、しかし、殆どの時間は議会とホワイトハウスの中だけで繰り広げられる。
スピルバーグの作品としては、極めて地味だが、派手なVFXの代わりにトミー・リー・ジョーンズやデヴィッド・ストラザーンといった円熟の俳優人の演技が、緊迫感あるドラマに華を添える。

 そして何より誰より、リンカーンを演じたダニエル・デイ=ルイスだ。
 この作品の演技でアカデミー主演男優賞に輝いた彼はもう、リンカーンそのものにしか見えない。
 華奢で物静かで、見た目は疲れきった男が、信念の前に別人の様な烈しさと強さを見せる。

 ひとりの父親であり、弱さや葛藤する姿も見せる、人間リンカーンをこの作品は描いている。
 そして、その信念のためには大きな声で言えないような汚い手も使ってみせる。

 作品で描かれた当時と、現代はまるで環境が違う。
 しかし、不思議と変わらないのは、どうやら保身や目的のために手段を選ばない「政治家」という職業の生態なのかもしれない。
 傾いた経済や、震災からの復興、憲法の改正論議と領土問題、決して明るくないニュースが続く中で、現代の政治家達が、どんな汚い手を使っても実現させたい信念があるとすれば、なんだろう?

 それが私利私欲と保身を約束するものばかりではない事を祈るばかりだ。