2009年6月14日日曜日

ハゲタカ/NARIZO映画レビュー

日本に絶望して海外生活を送っていた“ハゲタカ”の異名を持つ敏腕ファンドマネージャー、鷲津のもとに現れたのは銀行時代の上司にして盟友の芝野。彼は今、日本を代表する企業アカマ自動車の企業再生を請け負っていた。やがてアカマ自動車は中国系の巨大ファンドに狙われていることが発覚する。その仕掛け人・劉は鷲津のかつての部下だった。敵対的TOBを仕掛ける劉に対して、ホワイトナイトを買って出た鷲津。しかし、その圧倒的資金力の前に鷲津は苦戦を強いられる。果たして、劉の目的は何なのか!?


投資ファンドが、企業やそこで働く人間の人生を変えていく...NHKで大評判だった硬派な経済系人間ドラマ「ハゲタカ」の映画化。
NHKとしては初めてのドラマからの映画進出。しかし、こいつが期待以上。
民放製作の映画の様な、あからさまにコマーシャルな売り方もせず、(というか、公共放送なので出来ず)映画になってもやっぱり内容重視。見応えのある作品に仕上がった。
監督・キャストはテレビドラマからの続投で、一気に見せるストーリー展開ながら、映画になってグレードが上がったとか、そういう風にはあまり感じなかった。これを見て、思ったのがやはり贅沢な制作費でNHKはドラマ制作してたんだろうな...ということ。
色んな意味で、NHKの凄さ、企画製作の底力を感じさせる1本だった。

映画単品でも充分、楽しめる内容だが、ドラマ未見なら台詞の中で触れられる主要キャストたちの過去の関係が気になって、おそらくテレビドラマのDVDをチェックしたくなるだろうネ。
良質な作品はソフトも売れる....これ間違いない図式。

サブプライムや派遣労働者という様な旬の話題から、企業買収に関わる様々なコトバまで、「経済」関係の用語が飛び交う映画だが、よく分からない言葉が出てきたとしても面食らうことは無い。この作品が見せたいのは、経済情勢ではなく、あくまで人間ドラマ。30分もすると圧倒的にリアルな語り口で展開するドラマに一気に惹き込まれている。

そして、とにかく利益利益で走ってきた金融屋たちが、最後にこだわったそれぞれの「信念」の所在が明らかになっていくラストに掛けて、非常に熱い。

その結果、自分なりに働くと言うことの意味とか、情熱とか、そういうものをもっと考えたり、噛締めたりしながら、30代をすごさにゃアカンね...と思っちゃったりする作品。

鷲津を演じる大森南朋や芝野の柴田恭兵は勿論、栗山千明や松田龍平もテレビドラマ同様、出てくるが、今回の敵役の玉山鉄二には釘付けだった。

彼の演じる中国系ファンドマネージャー劉一華は、カリスマ性とスマートさ、冷淡で、どこか謎を秘めている魅力的なキャラクター。ラストに実は...という余韻も残し、テレビドラマからの続投組を凌駕する存在感でこの作品を支配した。
対立するキャラに魅力があるとストーリーは疾るよね。
初めて玉山鉄二っていい役者だな...と思ったNARIZOなのだった。

0 件のコメント: