日露戦争後の明治40年。参謀本部の 測量手・柴崎は日本地図最後の空白地点である劔岳の初登頂と測量に出発。100キロ超の測 量器具を担ぎ、粗末な装備で挑む彼らは果たして、人間が登る事を許さないと言われ続けてきたその山の頂を極める事が出来るのか。美しくも 厳しい山々と人間が織りなす壮大なドラマ。
キャメラマンとして、「八甲田山」や「鉄道員(ぽっぽや)」などで、美しい映像を撮り続けて来た御大、木村大作が初監督として演出したのが、この実話を基にした山岳映画。
何よりもリアリティを求めて撮影隊は本当に剣岳での撮影を敢行。徹底的にこだわりぬいた映像、順撮りで望んだという画からは、役者とあの時代に地図作りのために命を懸けた男たちの姿がシンクロしていたような気がする。
とにかく役者たちの顔つきが違うのだ。最初と最後では。
そして大スクリーンに広がる目を見張るような、雲海、深緑、紅葉、地獄の様な断崖絶壁、猛吹雪、地吹雪、雪崩そして眩いばかりの太陽。その全てが、あまりにも雄大で美しく、過酷で恐ろしい。
大自然に挑む男達の姿や、自然に対しての人間の小ささを通じて、何かを成し遂げることの意味を問うこの作品。正直、圧倒されはしたものの、この内容で2時間20分は長過ぎる。
キャメラマン出身の監督として、可能な限り素晴らしい画を見せたい気持ちはわかるのだが、ただ、男たちが山を登り続けるストーリーは平坦で、たいした抑揚も無い。どのシーンも同じ様にさえ感じる。
この映画はドラマとしての演出よりも、本物の迫力で魅せる作品なのだ。
だから、二度見たいかと問われればかなり微妙な感じ。
男たちが汗まみれ、吹雪や雪崩に巻き込まれつつ登山しながら演技しているのに対して、柴崎の若妻を演じた宮崎あおいは、短い登場シーンでありながらも印象に残る熱演。
他の役者は登り損なんじゃないかと軽口を叩かれるくらい、男達の苦難よりも、彼女の愛らしい笑顔の方に、興味が向いてしまった。
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