2009年6月6日土曜日

ターミネーター4 (Terminator Salvation) /NARIZO映画レビュー

2018年。審判の日と呼ばれる核戦争後の地球。人間に反旗を翻したマシーン「スカイネット」と人間の抵抗軍の若きリーダー、ジョン・コナーは、やがて自分の父となる少年カイル・リースと自分を「スカイネット」が抹殺しようとしている事を知る。未だ見ぬカイルを果たしてジョンは見つけ出し救う事が出来るのか!

あまりに酷い出来だった「ターミネーター3」を無かったことにして、「2」に続く正当なる続編として製作される4作目の噂を聞いたときから、俺は興味が半分。
それでいながら、既に終わってる感漂うシリーズの続編に、「期待できない」という複雑な感情で、先行公開の夜を待っていた。

しかし、ホント、期待していなかったから余計にだと思うのだが、これが面白かった!
アクションも世界観も、非常に高いクオリティで2時間近い長さを一切感じさせないスピード感に溢れている。
「T4」は、ツボをおさえたハードなSF映画に仕上がっていて、「T3」の悪夢をホントに無かったことにしてくれる作品になっていた。
原題は「Terminator Salvation」。ホントにシリーズがSalvation(救済)された感じだ(爆)。
最大に楽しむためには是非、「ターミネーター」と「ターミネーター2」を一度は見てから、劇場へ行ってみて欲しい。

(歴代のターミネーターと新作のターミネーターはお台場で展示中↓)


今回は、シリーズ初めてメインの舞台がマシーンと人間の戦う未来に。
荒涼とした廃墟と砂漠は、まるで「北斗の拳」に出てくるようなビジュアルだ。未だ少年のカイル(アントン・イルチェン)と口の利けない少女スター(ジェイダ・グレイス)なんて、まんま「北斗の拳」のバットとリンみたいな取り合わせ。そんな二人の守護者として現れる、言わばケンシロウの役割が、マーカス(サム・ワーシントン)である。

実は、この作品の主役はコナーではなく、彼。マーカスだったりする。
人間の心を持ちながら、肉体は機械化されてしまった男の悲哀が描かれる。
何か、ショッカーに改造された仮面ライダーみたいな背景だ。

未来のために、身を挺して誰かを守る...1作目は未来からターミネーターを止めに来たカイル・リース、そして2作目はジョン・コナーが自らの命を守るために送り込んだターミネーターが、キーとなるキャラクターの身を守ってきた。
その役割を果たすのが、まさに今回はこのマーカスというキャラクター。
コレは中々上手い設定で、守護者的キャラを、人間(1作目)、マシーン(2作目)、改造人間(4作目)と変えて大きなマンネリを防ぐことに成功しつつ、ラストの展開に説得力を持たせるような伏線が張られている。
お約束的なところへちゃんと、落ち着かせた脚本も、よくまとまってはいたと思う。

(アメリカの映画プロモサイト「Terminate Yourself」では、自分の写真[500kb以内]をアップロードするとターミネーターに加工できる。↓俺)




しかし...だ。

監督のMcG(マックジー)は出世作が「チャーリーズ・エンジェル」シリーズって事で、アクション大好き野郎かつ、日本のサブカルが大好きなコトを公言しているお方。
それがどの程度関係しているのかは判らないが、この作品、面白いけど、どこか野心に欠けると言うか、全く新しい驚きが無かったというのも事実だった。

アレだけの人気シリーズで、斬新さを出せといわれるのは酷かもしれないし、何処かで見たようなキャラや演出を手堅くこなして、マーケティング的に失敗は無いのかもしれないが、「これはスゲェ」「やられたぜ」と思うような驚きが、ストーリーからも映像からも感じられなかったというのは、この作品がまともな続編のクオリティを持っていただけに残念だった。

その分、過去の作品に対するリスペクトは、細かいところにまで感じられたし、オタク的にニヤニヤ出来るところもあって、愉しかったわけだけど。
全体として、厳しく見てしまうのはやっぱり、「ターミネーター」というシリーズが、常にSF映画の中に新しい驚きや価値観を植えつけていった凄い作品シリーズだった(3を除いて)からなんだと思う。
そういう意味で、かなりアウェーな状況下で、McG監督は相当頑張ったと思う。

あとは、どうしようもなくキャスティングが地味に見えてしまったことかな。
申し訳ないけど、いい役者なのはわかっていても、ジョン・コナーを演じるクリスチャン・ベイルには華が無いし、そもそも展開的にマーカス役のサム・ワーシントンの方が目立ってる。
彼も、頑張っているのはわかるんだけど、やっぱ脇役級。
カイルを演じたアントン・イルチェンなんて、失礼ながらチンケな感じで、とてもこのキャラが将来、1作目でマイケル・ビーンが演じたイケメンキャラに成長する気がしない。(爆)
そんな中、CGIでターミネーターとして登場したシュワルツェネッガーに劇場がイチバン沸くと言う虚しさ。
そりゃそーだ、判るよ。だけど、ガンバレ生身の役者たち。CG製俳優の演技とインパクトに一瞬で全部持っていかれてどうする!

そんな訳で、色々言っちゃったが、未来を舞台にしたターミネーター新シリーズは、課題がありつつも、応援したい船出を迎えた。これは事実。
次回作やその次の作品で、徐々にメインキャラたちに主役としての「華」が出てくるか、見守り、1ファンとしてシリーズが盛り上がるコトを俺はせつに願っているよ。

カワイイ馬鹿ハードSFに乾杯!!

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