あの世界最高峰のサーカス・エンタテインメント集団シルク・ドゥ・ソレイユ初の映画化。
特定の言語に頼らず、音楽と肉体を駆使したパフォーマンスで全世界を魅了してきた彼らだけに、この作品にも台詞は殆どない。
もっと言えばストーリーすらない。
大スクリーンに繰り広げられるのはシルク・ドゥ・ソレイユが誇る最高峰のステージの壮大なショ-ケースだ。
田舎町のサーカスに遊びに来た主人公のミア(エリカ・リンツ)が、空中ブランコの青年に魅せられ、砂漠の中にテントが点在するシルク・ドゥ・ソレイユの異世界を彷徨う。
3Dメガネを掛けて、観客たちも彼女と共にラスベガスの専用劇場で上映されている "O"(オー)、KÀ(カー)、Mystère(ミステール)、Viva ELVIS(ビバ・エルビス)、CRISS ANGEL Believe(クリス・エンジェルビリーブ)、Zumanity(ズーマニティ)、The Beatles LOVE(ザ・ビートルズ・ラブ)など、シルク・ドゥ・ソレイユの7つのステージ世界に迷い込む。
それぞれの狂言回してきなキャラクターが顔を出し、専用劇場ならではの圧倒的規模の装置と、目を見張るパフォーマンスが展開される。
そもそもシルク・ドゥ・ソレイユは、ドラマチックで映画的なエンタテインメントなのだ。
そして映画では再現が難しかったリアルでライヴな迫力を最新の3D撮影技術は、全国のスクリーンに届けることに成功している。
どこまでも、シルク・ドゥ・ソレイユの映画なので、監督の個性が作品にどう影響したのかは謎だ。
しかし、監督のアンドリュー・アダムソンは「シュレック」や「ナルニア」を手掛けてきた人物。
ファンタジー的世界に対する表現力を期待するには良い人選だったのかもしれない。
見所は、客席では不可能なアングルや至近距離でのパフォーマンスを立体映像で楽しめること、これに尽きる。
高度な技であっても、それが映画で、しかもあまりに優雅で美しく、静かだとついつい眠気に襲われる。
そして、このフィルムは時として、エンタテインメントというよりアートに近い印象を抱かせる。
91分はこの題材としては、ギリギリ興味を繋ぎ止めておける時間の限界ラインだった。
パフォーマンス同様の絶妙なバランス。
そして幾つかの作品は、いつか生で見て見たいと強く思わせられた。
そういう意味では、映画としてはともかく、ショーケースとしては大成功だと思う。
薄々、予想は付いていたものの内向的で気が弱そうに見えた主人公のミアも、演じているのはシルク・ドゥ・ソレイユのアーティストなワケで、ラストは本領を発揮!!
あんた、凄いじゃないのという技のつるべ打ちになるところは、個人的にちょっとしたツボだった。
ラストシーンは、シルク・ドゥ・ソレイユらしさ満点の美しい大円団。
しかも、エンドロールにかぶせる様に7つのステージそれぞれの感動的なカーテンコールが次々と繋がれて、観客とステージ、 両者の化学反応で訪れるシルク・ドゥ・ソレイユのステージの最高の瞬間を紡いでいく。
そんな素敵なエンドロールなだけに、途中で、誰も客席を立たなかったのが印象的だった。
しかし、やはりシルク・ドゥ・ソレイユは生で見たいっすね。(笑)
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