朝鮮戦争の激戦地。
板門店では2年前に始まった停戦協議が難航し、アメリカと北朝鮮、中国の三者が南北境界の線引きを巡って火花を散らしていた。
停戦協定成立から発効までの12時間に行われた最後の戦闘に参加した兵士たちの姿を描いた戦争映画。
未だに終結していない朝鮮戦争停戦の現実を最前線の視点から描いた戦争大作。
真っ直ぐ立つのも困難な高地を、何十回も奪い奪われる戦場で、軍隊の規律や国家の正義といった正論では語れない「生き残る」ための「正義」、人間らしく「生き続ける」ための最前線での「正義」を描いた作品になっている。
同じ高地の主が何度となく変わる激しい攻防の果てに、いつからか始まった敵への置手紙や、タバコや酒の交換と言ったエピソードから、この手の題材の韓国映画でお馴染みのウエットな人間ドラマへと発展し、やがて舞台となる中隊が抱える恐ろしいトラウマが明らかになっていく。
一貫して描かれるのは同じ民族どうしで殺しあうと言う虚しさだ。
敵味方に分かれても、根底にお互い複雑なシンパシーを感じあうという複雑なドラマをリアリティをもって描けるのは、韓国映画ならではだと思う。
中央から左遷されるように異動してきた防諜隊中尉カン・ウンピョ(シン・ハギュン)の視点を通じて、安全圏からは窺い知れない戦場の現実を観客も目の当たりにする。
韓国版の「プラトーン」とか「ハンバーガーヒル」なのだな。この作品は。
2年間で二等兵から中尉に特進し、戦場で自分の信じる正義と倫理観のもとに部下を従えるキム・スヒョク(コ・ス)や、どこか死に場所を探しているようにも見える中隊長のシン・イリョン(イ・ジェフン)は、病める戦闘の実態を観客に突きつけ、監督のチャン・フンは、南北どちらに寄ることなく、あくまでその戦争の虚しさに焦点を当て続ける。
戦闘シーンの迫力も、徴兵制が未だ残る国の映画で現代戦を描いているだけに、リアルに迫るものがある。
クライマックス。
停戦の知らせに生還した実感を噛み締める両軍の前線。
しかし、その発効が12時間後である事が告げられる「ぬか喜び」感と、12時間後の占領地で国土が決まるとばかりに、最後の総攻撃を命じる両軍の上層部。
救いのない戦闘がこの作品のラストに待っているわけだが、中国やアメリカと言った大国の利害に翻弄され、代理戦争として血を流し続けなくてはならなかった怨嗟をスクリーンから感じずには居られない。
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