2009年1月29日木曜日

誰も守ってくれない/NARIZO映画レビュー

ある日突然、殺人犯の妹になった15歳の少女。加熱するマスコミに追い詰められ、命を絶った母親。
ネットに流出する個人情報。社会に追い詰められた少女を守る任を命じられたのは、やはり心に傷を抱える一人の刑事だった。


製作 亀山千広 脚本監督 君塚良一 と言えば、言わずと知れた「踊る大捜査線」のコンビ。
「踊る~」の制作過程で警察に取材する内、公式には認めないまでも、世間に追い詰められた加害者の家族が自殺をするのを防ぐため、警察が家族の保護をすることがあるという事実を知った君塚が、10年間温めてきた企画を映画化したのが本作。

日頃、中々スポットの当たることが無い加害者の家族にスポットを当て、マスメディアが糾弾し、煽る世論に、インターネットで顔の見えない野次馬的な市民が追従し、連鎖して、個人を追い詰めていく不気味さ。

かつては、世論を形成する上で唯一無二といってよいほど大きな影響力を持っていたマスメディアも、顔の見えない一市民があらゆる情報を好き放題、世界に向けて発信出来てしまう現在では、はるかにそれより強力で暴力的なまでのネットの情報力に全く及ばない。
被害者にも、加害者にも、無名の市民にも、誰にも肩入れせず、ドキュメンタリータッチで淡々と描かれていく魔女狩の様子には、狂気さえ感じる。

テレビ局の出資を受けた作品としては、かなりアグレッシヴなテーマだ。ベストセラー原作で安易に企画されたものではなく、オリジナル脚本だという点においても、この題材は、凄く勇気が要ったと思う。
世論を煽るマスメディアの偏向した過熱振りなどは、流石にリアル。
見終えた後に残る強烈な印象。
間違いなく、「今、見るべき邦画」だと思う。

そんなわけで、二人の出世作「踊る大捜査線」の劇場版なんか比較にならないほど、映画としても、脚本としても素晴らしく、実にパンチの効いた衝撃作だった。
モントリオールで最優秀脚本賞。
納得の出来栄え。

そして、キャストがまた絶妙。
特に新鋭の志田未来は、内面に強いものを秘め、耐える加害者の妹を熱演。安易にお涙頂戴にしない、させない展開も、彼女だからの説得力だったと思う。それだけ凄い子役。
勿論、傷を抱える刑事を演じた佐藤浩市は言うことなしだし、脇を固める演技陣も豪華で、久し振りに邦画でお金を掛けた、ちゃんとした骨太のドラマを見た...という満足感を得られた作品だった。

予告編で流れた「少年メリケンサック」では、全く違う逝っちゃったテンションの佐藤浩市。
あっちも凄く気になる。w待ち遠しい!!

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