2010年5月29日土曜日

プリンス・オブ・ペルシャ 時間の砂/NARIZO映画レビュー

ヨーロッパからアジアまでを支配していた古代ペルシャ帝国。ペルシャ王に勇気を見出されたスラムの少年ダスタンは、王の養子として迎えられ、やがて王子となった。15年後、勇者に成長した第3王子ダスタン(ジェイク・ギレンホール)は、兄や叔父ニザム(ベン・キングズレー)と共に、聖なる都アラムートの征服に成功。
勝利を祝う宴の席で、ダスタンは父王にアラムートの法衣を送るが、法衣に塗られた毒で王は絶命し、暗殺者の疑いを掛けられた彼は、アラムートの娘で、神に仕えるタミーナ(ジェマ・アータートン)と逃亡する。
ペルシャ帝国軍と、謎の暗殺者集団ハッサンシンから追われながら、ダスタンは果たして無実を証明できるのか!


「プリンス・オブ・ペルシャ」と言えば、俺が子供の頃に流行ったアクションゲームの名作。
トラップだらけの宮殿に忍び込んで、制限時間以内に姫を助け出すというシンプルな内容だが、これが単なるアクションゲームではなく、トラップを回避したり、敵兵をトラップに誘い込んだりするパズル的要素も満載で、操作性が悪いパソコンのキーボードを叩きながら、夢中で遊んだ記憶が懐かしい。

そんな懐かしのタイトルをディズニーが突然、映画化するという時点で、興味が掻き立てられた反面、プロデューサーがジェリー・ブラッカイマーだし、まぁ、間違いなく馬鹿映画だろうと、中身の出来栄えについては正直、何の期待もしていなかった。

しかし、蓋を開けてみれば監督は元来ドラマを得意とするマイク・ニューウェルだったせいか、派手なだけでペラペラ感満載のしょうもないアドベンチャー映画にはなっていないし、ややマニアックな俳優だった主演のジェイク・ギレンホールは、この作品で一気にブレイクしそうな野性味に溢れたカッコよさ。ジェマ・アータートンのお姫様もエキゾチックな魅力に溢れていて、2時間近い作品を夢中で楽しんでしまった。

キャラクターの性格付けが魅力的である上に、CGIをふんだんに使いながらも、観客を熱狂させるのはあくまでゲームのスピード感、スリル感が蘇るような目まぐるしいアクション。これに加えて、ゲームシリーズから発展させたキーアイテムの「時間の砂」の存在など、原案の魅力を上手に借りてきつつ、娯楽作品として今、求められる要素を手堅く演出したマイク・ニューウェルの手腕は冴え渡っていて、間違いなくこの数年のディズニー制ライヴ・アクションエンタテインメントでは最高にバランスの取れた作品になっている。

しかし、主演の知名度がいまひとつのせいか、ロードショー時のプロモーションがいまひとつパッとしてなくて、こんなにも良作なのに、金曜初日のレイトショーで客席がまばらなのが、凄く気になった。
相手を選ばないテンション高めのデート・ムービーとしてもオススメの「プリンス・オブ・ペルシャ」。

今度の6月1日、「映画の日」に何か1本、気分転換にテンションが上がる映画を薦めるとしたら、俺は迷わずこれを薦める。
「プリンス・オブ・ペルシャ」...これを見逃すのは勿体無い。





2010年5月16日日曜日

グリーンゾーン/NARIZO映画レビュー

2003年、英米連合軍によって陥落したイラクの首都バグダッド。ロイ・ミラー上級准尉(マット・デイモン)は、イラク政府が隠した大量破壊兵器を発見するという任務に就いていたが、一向に兵器を発見できず、情報の正確性に疑問を抱いていた。
やがて実態のない情報提供者の存在や、戦争突入の前に行われたアメリカ政府高官とイラク軍上層部との間の不透明な会合の存在が明らかになる。果たして、この戦争の裏には何があるのか...。


もともと、ドキュメンタリー映像出身のポール・グリーングラス監督は、これまでも911ハイジャックで犠牲となった機内を克明に描いた「ユナイテッド93」に代表されるように、リアリティに溢れた緊迫感のある映像を得意としている。
同様にハードなアクション・サスペンスであるジェイソン・ボーンシリーズもマット・デイモンと2作品撮っていて、どうしても、あのシリーズの主人公である記憶を失った凄腕の暗殺者に主役のイメージが重なりそうになる。
しかし、本作のメインキャラクターであるミラーは、任務に忠実であるが故に、戦争の裏に見え隠れする大きな欺瞞を放っておけない性格の、「ごく普通の兵士」だ。
混沌とした戦場。不確かな情報が行き交う中で、ミラーは疑問を抱いてしまう。果たしてこの戦争は、大義名分のある、本当に正義の戦争なのだろうかと。
圧倒的リアリティで、混乱のバクダッドが描かれ、冒頭から観客もまた、その真っ只中に放り込まれる。
このリアリティのお陰で、一兵士が、大国アメリカの欺瞞を暴こうとするという、いかにも映画的「お話」も、ドキュメンタリーの様に見えてくるのだ。

実際にイラクで大量破壊兵器は見つからなかった。
あの戦争は、誰が起こした、何だったのか....エンタテインメントの切り口から、それに迫ってみせたテーマ性は大いに買いたいのだが、妙にしぼんでしまう尻すぼみなラストを見て、面白かったのに物足りなさを感じてしまった。
しかし、これはこれで良かったのかもしれない。
ラストの混沌は、未だにイラクの地で続いているわけだから。


2010年5月1日土曜日

ウルフマン/NARIZO映画レビュー

1891年、英国のブラックムーア。
兄ベンが行方不明になったことを、兄の婚約者グエン(エミリー・ブラント)の手紙で知らされたローレンス(ベニチオ・デル・トロ)は、25年ぶりに母の死をきっかけに疎遠になった父ジョン(アンソニー・ホプキンス)の住む、生家のタルボット城に帰ってくる。
だが、既に兄は無残に肉を削がれ、亡骸になっていた。
村には、満月の夜に謎の殺人鬼が出没するという伝説が残されており、満月の晩に人を狩る獣の影を目撃したローレンスは、それを追う最中、待ち伏せされて瀕死の重傷を負ってしまう。ジプシーに助けられた彼は、一命を取り留めるが、彼を襲ったものの正体がウルフマンであり、その牙に掛かった彼もまた、満月の夜に変身を遂げる宿命を背負わされた事に気付くのだった。
満月の夜、ローレンスは変身し、凶行に及ぶ。果たして、彼を満月の晩に襲ったウルフマンの正体は何者なのか!
彼は宿命を変えるコトが出来るのか!


 「狼男」を題材に、ベニチオ・デル・トロとアンソニー・ホプキンスという名優二人を主役に配し、現代の映像テクニックを駆使しながら、古典的な要素や伝説の設定に忠実に、正統派モンスター映画を作ったと聞けば、重厚で見応えのあるモンスター映画を期待するのは当然だろう。
事実、この作品は、そこらの3Dアトラクション映画なんかより、よっぽど魅力的だ。
残念ながら劇場の客席は、渋谷だって言うのに満月の夜の森の中の様に人影が無かったが、「狼男でしょ?」と馬鹿にせず、主役の二人のぶつかり合いを見に行くべきだ。この作品は、確かにモンスター映画かもしれないが、ドラマとして充分楽しめる作品になっている。
あと、忘れてはいけないのが、「プラダを着た悪魔」で有名になったエミリー・プラント。客席で、狼男に変身したくなるほど、この作品でも彼女は美しい(笑)。
もちろん、モンスター映画の類が好きなファン、B級映画ファンが楽しめることは請け合いだ。
いま、全盛のVFX技術に加えてSFXと呼ばれていた時代にホラー映画で名を馳せた特殊メイクの達人リック・ベイカー(有名なのはマイケル・ジャクソンの「スリラー」のPVや、「狼男アメリカン」、[Planet Of The Ape(リメイク版の「猿の惑星」)]など)が担当した変身シーンとか、お子様入場規制が掛かってるのが納得の肉片が飛び散るウルフマンの襲撃シーンは必見だし、2匹(人)のウルフマンが対決するシーンは、妙に動きがコミカルだったりしてB級映画ファンのココロも鷲掴んでくれるはずだ。(B級好きの皆さん、監督は「ジュマンジ」や「ジュラシックパーク3」のジョー・ジョンストンだぞw)
美術も、凄く良い雰囲気を出しているんだが、プロダクションデザインは「スリーピーフォロー」のリック・ハインリクス。
何といっても月に向って遠吠えするベニチオ・デル・トロだぞ。これを見ずしてどうする。
早くしないと、不入りで終わってしまいそうだから、この連休中に劇場へ急げ。