2012年12月3日月曜日

人生の特等席

家庭を顧みない、メジャーリーグで名スカウトマンのガス(クリント・イーストウッド)。 
五感の全てを使って選手を発掘してきた彼だったが、今や後輩のスカウトは専らデータ重視で球場に足を運ぶこともなく、パソコンを使えない彼を馬鹿にしていた。
一方、ガスはこのところ視力が衰え、失明の危機にあることを伏せて仕事をしていた。
 父との間にわだかまりを感じ続けてきたひとり娘のミッキー(エイミー・アダムス)は、そんな父の異変に気付き、スカウトの旅に同行する。


 「野球」が壊れかけの「家族」の関係を修復し、「旅」を通じて、父と娘が絆を確かめ合う。
「野球」に「家族」に「ロードムービー」ときた!!
アメリカらしいテーマが三拍子そろったイーストウッド4年ぶりの主演作。
 監督はイーストウッドの映画製作に20年間携わってきたと言うロバート・ロレンツ。これが初監督作品だ。 
無骨なイーストウッドは、佇んで居るだけでも何かを語ってしまう。
 目と耳で、選手の素質を見抜いてきた伝説的スカウトと、選手を見に行く事もしないIT野球スカウトとの価値観のぶつかり合い>
頑固な老兵イーストウッドの魅力は全開だ。 

弁護士先生としてキャリアを築いている娘が、反目しながら父との時間を通じて忘れていた想いを強めて行くというのがこの作品の主題。
視力を失いつつあるという、スカウトとしては致命的な設定を通じて、弱さを見せなかった父の衰えを娘は知る。
親子関係の「触媒」として「野球」が重要な役割を果たす。
 はっきり言って展開を読める作品なのだけど、それだけに、何もわかっていない小僧どもに一泡吹かせるイーストウッドの演技は痛快。
そしてポジティブで気持ち良い作品だ。
 映画ならではのご都合も含めて楽しめる。
地味だけど、心温まる良質なドラマだ。
そして、久しぶりに「野球」を見に行きたくなった。

 

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