2009年7月6日月曜日

ディア・ドクター/NARIZO映画レビュー

山あいの村で慕われている医師、伊野(笑福亭鶴瓶)の元に、医大を卒業したての研修医・相馬(瑛太)がやってくる。相馬は田舎の医療に戸惑うも、伊野の働きぶりにやがて共感を覚えるようになっていく。しかし、ある日突然、伊野は、失踪する。彼には誰にも言えない大きな秘密があったのだ。

「ゆれる」が絶賛された西川美和監督の最新作。
...と言っても、あまり「ゆれる」のテーマにはそそられなくて、実は未見だった俺。しかし、今回は、山間の村で慕われる医師の失踪と、そこに隠された秘密...という作品のプロットに興味が沸いた事と、あまりにも周囲の特に業界関係の友人達の評判が高かった事、そして何よりその医師を演じるのが笑福亭鶴瓶というところが、気になって、シネカノン有楽町一丁目へ日曜朝っぱらから出かけて見た。

劇場は、年配者から若者まで満員だった。
上映劇場数は決して多くないものの、これが適正サイズの興行でおそらく相当高いアベレージで劇場の収益が上がって居そう。で、その吸引力におそらく物凄く貢献して居そうに思ったのが、主演の笑福亭鶴瓶の存在だ。
誰からも憎まれない鶴瓶のキャラクターだからこそ、中盤には観客に明らかになってしまう秘密(実はもぐりの医者だった)をも、どこか許されてしまうし、彼の存在、村人との心の触れ合いそのものが、科学的医療の正確性よりも村人達にとって必要であったかのように暖かい眼差しで描かれる作品の展開にも、無理を感じ無い。

葛藤しつつも、偽医者が誰よりも暖かい「こころ」を持っていた...そういうファンタジーが、ここに見事に成立している。

エアポケットの様な無医村の問題や、現代の医療が抱える様々な課題に西川監督なりの問題提起を投げかけながら、実は医療映画でもなんでもなくてシンプルに「こころ」の映画になっていたと思う。

思えば、子供の頃にお世話になった街医者の先生達の医院ってのは、朝の待合室が老人達の集会場みたいだったけど、多かれ少なかれ、技術よりも「こころ」の医療だったのかもしれないなぁ...(笑)


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