2012年9月8日土曜日

踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望

警視庁湾岸署管轄内で誘拐事件が起こり、数時間後に被害者は射殺体で発見された。犯行には警察が押収した拳銃が使用されたと見られ、所轄の捜査員には情報開示されないことが捜査会議にて発表される。

今から15年前に放送された「踊る大捜査線」のテレビシリーズは、娯楽ジャンルとしての警察ドラマの歴史を塗り替えた作品だった。刑事は銃をいつも携帯していたりはしないし、管轄や役割が事細かに決められ、規則でがんじ絡め。初めて官僚組織としての警察の構造を娯楽作品の世界で描くことに挑戦した野心作にして、ユニークな群像劇は、どこかサラリーマン社会にも通じるユーモラスさにあふれていた。
放送当時、社会人一年目で、まさに会社という組織の中で葛藤していた俺は、同じく警察という組織の中で葛藤する青島(織田裕二)や室井(柳葉敏郎)に共感を覚えたりしたものだ。
テレビドラマ以降、作られた映画は、ご存知のとおり次々と記録を塗り替える大ヒットになったが、残念ながら「映画」としては三流以下の出来で、育ててきたキャラクターや作品の財産を食い潰しただけの企画に思えた。
なにより、取材に裏打ちされたリアルな警察組織の事実に、ユーモアと虚構を加えて絶妙なバランスでエンタテインメントにしていたテレビ版の魅力とそれは、程遠いものだった。
そして、15年。観客もキャストも歳を重ね、ついにシリーズが完結されると聞いて、それを見届けるために劇場へ足を運んだ。

15年というシリーズの人気は流石だ。オープニングタイトルから、フラッシュバックでシリーズの歴史をさかのぼり、ストーリーはどうであれ、同窓会の様にスクリーンは楽しげだった。
劇中もリアルに時間は経過していて、芸達者な署長(北村総一郎)は定年して指導員になっているし、新しい署長は真下(ユースケ・サンタマリア)。ホントにそろそろシリーズも幕引き時だよなと、思わずにはいられない設定だ(笑)。
ストーリーは警察の内部腐敗を描いたもので、これまでの映画シリーズの様に、パッチワークのような酷い展開にはならず、1つの大きなストーリーを追い掛けるものになっている。
これまでの映画版に比べて、非常にダークな展開をみせる最終作は、青島と室井の組織の中での葛藤に、ひとつの終止符を打って見せる。
乱暴に過ぎるところはあるが、最後に「官僚組織の中で葛藤する刑事たちのドラマ」という原点に回帰して、それに蹴りをつけてみせたシリーズ最終作。俺は、ドラマからのファンとして楽しませてもらった。

映画としては、やっぱりあまり良い出来ではないけどね。(笑)

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