2008年11月16日日曜日

ハッピーフライト/NARIZO映画レビュー

世界でもトップレベルの過密空港、羽田 東京国際空港。空港は飛行機を安全に運行するために、今日も大忙し。ホノルル行きのチャーター便にはCAとして初の国際線乗務で妙にテンションが高い斉藤(綾瀬はるか)や、副操縦士から機長に昇格するためのOJTを兼ねたフライトにガチガチに緊張する鈴木(田辺誠一)の姿があった。それでも何とか無事に離陸はしたのだが....果たして無事にホノルルへ着けるのか?

 先ずは、この作品のために航空関係者への取材を重ね、リアルに笑える現場ネタ満載で、航空コメディというハードルの高いテーマに取り組んだ矢口監督の挑戦心に拍手を贈りたい。
邦画で、こういう作品が成立するなんて、チョッと思っていなかったし、恐らく従来だったら機内上映なんて出来なさそうなテーマ(飛行機がアクシデントに陥る)の作品に惜しみなく協力したANAにも拍手だ。

この作品は、空の業界の群像劇。
作品の大きな魅力は、くすっと笑えるコメディ要素とリアリティ。
職業ドラマ、群像劇、コメディでありながらリアルに組織が描かれる.....そう。この作品で魅力を創り出す構成要素は「踊る大捜査線」テレビドラマ版のそれに近い。

華やかそうだけどしんどくて、殆ど空飛ぶ給仕係状態のキャビンアテンダントが描かれたり、クレーマーな乗客や、冷静なパイロット達が中心に描かれるドラマは日本でも過去に色々あったけど、日頃、乗客からはランウェイに出る飛行機に手を振って見送っている姿しか見えない整備士達のドラマとか、管制官の日常とか、コントロールセンターやグランドのシゴトなり、その微妙な縄張り意識や、プロ意識がユーモアを通じて描かれた事は実はこれまで殆ど無かったと思う。

つまり、この作品の本当の主人公は、日頃はドラマチックに目立ったりはしないけど、航空業界で安全運行を支えている人たちなのだ。彼らが個性的でエピソードも面白いから、ただ飛行機が離陸して着陸するだけの映画が、物凄くドラマチックに見える。(まぁ、アクシデントは勃発するわけなんだけど)

そのアクシデントも、リアルに起こりえる内容で、途中から中々スリリングな内容になっていくわけだが、ちょっと頼りなかったり、惚けた感じの登場人物たちが、危機を目前にプロフェッショナルとしてシゴトに打ち込んでいく姿には、惹き付けられるものがあって、確実にANAのイメージ向上に繋がっている。
いやぁ、凄いプロモーション映画だな。これは(笑)。

で、拍子抜けするくらい平穏なラストを迎えた頃には、すっかり「ハッピー」な感じになっている。
平和というか、ヌル過ぎて何か尻切れ感さえ感じるエンディングが勿体無い気さえしたけれど、本来、平和で無事じゃなければならない業界を題材にしているから、あんなもんなのかもしれないな。

それから、俺としては、国際線の話なのに生まれ育った地元、大田区の羽田が舞台だということで、チョッとテンション上がった作品。
天気が良い日に、たまに飛行機を見に行く城南島でいつも目にする16Lや34Rの滑走路が重要な舞台として出てくるし、空港でシゴトについている人達が地元に身近に居たりすることを思い出して、親近感も湧いたせいか、2割増に楽しめた。w

いや、そうだなくても構成とか、演出とか、非常に良く出来た映画だ。
デート映画としても、見終えた後に映画の話で盛り上がれると思う。オススメです。


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