2009年3月24日火曜日

ワルキューレ/NARIZO映画レビュー

ヒトラー政権末期のドイツ。シュタウフェンベルグ(トム・クルーズ)はじめ、一部の政治家や軍人達はドイツの敗北を予感していた。何度と無く繰り返されるヒトラー暗殺計画。その最後となった暗殺未遂事件の実話を映画化。

トム・クルーズがドイツ人には見えないとか、色々突っ込みどころはあるものの、この手の作品にありがちなロマンスなんかは完全に排除され、ただただストイックに、淡々と、ドキュメンタリーでも見ているかのような客観的演出で事件は描かれる。

主人公は、言うなればテロリストである。彼の考える正義を殊更ヒロイックに見せるでもなく、当時のドイツ国民全員がひたすら盲目的にヒトラーに従っていたわけでもない事実をきちっと表現した。

そういう意味で、ステレオタイプに善悪を決め付けて、作り手の論理でナショナリズムを刺激したり、感動させようとしたりは一切しない。その全ては、観客にゆだねられていると言って良い。

そのせいか、結局、何にも誰にも共感できない作品になった。
むしろ、これはエンタテインメントとして感情移入する類の作品ではなく、どちらかと言えば「NHK特集」みたいな心の距離感で評価すべき映画なのだと思った。

で、俺はこの作品に何を見たのか。

戦争映画ではないし、サスペンスとして見るにも半端だ。

俺が面白いと感じたのは「組織」と「人」のドラマと言う部分だったりする。

組織に所属する人間は、組織に守られ、組織を利用するが、組織そのものには意思が無く、意思は組織の中の人間や組織を動かす人間が持っている。

この作品が描くのは、組織の中で葛藤する個人の姿だ。
遮二無二突っ走るもの、保身を考えるもの、そっと賛同するもの、常に打算で動くもの、長いものに巻かれるもの。
あらゆる思惑が交錯する様は、地味に面白い。

これは昔のドイツの話だが、多かれ少なかれ、似たような人間模様は、会社のオフィスでも起きていたりするものである。(笑)
そういう意味では、ここぞと言うときの人の行動は、実に興味深い。

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