2011年2月22日火曜日

喋らなければ画になってた/映画 「あしたのジョー」

昭和40年代。東京のドヤ街で喧嘩に明け暮れた生活を送っていた矢吹丈(山下智久)は、元ボクサー・丹下段平(香川照之)にボクサーとしてのセンスを見出された。
やがて少年院へ収監されたジョーは、プロボクサー・力石徹(伊勢谷友介)と運命の出会いを果たし、反目しあいながら少年院のボクシング試合で対戦。クロスカウンターパンチによるダブルノックアウトで引き分ける。
ライバルとして惹かれ合うようになった二人は、プロボクシングでの再戦を誓い、決戦のリングを目指してひた走る。


 邦画ブームはとうとう、名作「あしたのジョー」の実写映画化を実現させた。監督は「ピンポン」の曽利文彦。本作の凄いところは、40年代のドヤ街を再現したリアルな美術や、CGがかすむほどに肉体改造をして望んだ主演二人の本物の迫力にある。

当初、ジャニーズ映画で「あしたのジョー」なんて、止めてくれよとしか思えなかったのだが、予告編の段階で、線が細いだけのイメージだった山下智久がボクサー体型になっているのを確認できたし、伊勢谷友介に至っては、佇まいに力石の風格を感じる凄みが漂っており、香川照之の丹下段平は、まんま劇画から抜け出たみたいなインパクト...と、本編を見ずには居られない、好奇心に駆られる作品の1つになっていた。

 ビジュアルは良いものの元来「棒読み俳優」と言って良い山下がメインのキャラクターを演じている時点で、想像付く結果ではあったが、演技はチョッと残念な感じで、原作からもってきた芝居がかった台詞などは完全に浮いてしまい、イタい事になっている。

その中にあって演技派の香川の好演が、光っていて、実際のところこの作品はかなり、香川の段平に救われている。
伊勢谷の力石も魅力的だ。

実際、肉体を改造して望んだ主演二人が漂わせているオーラには、スクリーンの雰囲気を支配する「迫力」があり、台詞を喋らなければ実に画になっていた。

少なくとも、原作に対しての深い愛情を感じさせるほどに忠実に演出されたこの実写版は、終映後に椅子を蹴り上げて帰りたくなるような作品ではなく、劇画やアニメのジョーにもう一度会いたくなるような、そんな作品に仕上がっている。
判ってはいても、力石の最期は熱かったし、続きが見たくなったのも事実だ。


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