2011年2月27日日曜日

残念にもドラマなき戦争映画/戦火の中へ

1950年。朝鮮戦争は、開戦わずか3日でソウルが陥落。北朝鮮軍の侵攻の前に韓国軍は敗走を続け、最終防衛ラインの洛東江に残存兵力を集結させていた。そのような危機的状態の中で軍司令部が設置された浦項女子中学校の守備に残されたのは、戦闘経験がほとんどない71人の学徒兵だった。

朝鮮戦争で命を落とした少年兵が母親につづった手紙を基に、制作された戦争ドラマ。
話題になっていたのは韓国映画史上空前の火薬量で再現されたリアルな戦闘シーンと言う事だったが、素人同然の学生兵が多勢に無勢の戦いに挑み、北朝鮮軍に手痛い損害を与えるという内容を描くにあたって、肉片が飛び散る戦場の描写を裏付けられる説得力を持ったストーリー展開には残念ながらなっていない。

予算が投じられていそうなリアリティのある戦闘シーンは、ストーリーの本筋部分にはなく、むしろ本来リアリティが必要なクライマックスの篭城戦には、あまりリアリティが感じられない。
本来、学徒兵を描きたいのであれば、力の入れ方は逆でもよかったはずだが、中盤の派手な市街戦が撮りたいがための口実に、学徒兵の悲劇を題材にしたのではないかとさえ思ってしまうほど、作品の力点は分散してしまっている。

映画が着想を得ているのは、あくまで一兵士の残した「手紙」であり、学生だけが多勢に無勢で戦ったかのような映画的誇張と演出によって描かれる戦場の中で、肝心のドラマのリアリティが失われてしまったのは残念だった。

映画の中でプロの軍人たちから放置された学徒兵達が、不安の中でどのように心をひとつにまとめ、数に圧倒する敵と対峙するのか...という、題材に対して見所となるはずのドラマや説得力が得られるようなプロセスを殆ど語ることなく、イケメンキャストたちは、それぞれの主張と価値観をバラバラとぶつけている。それでもなんとなく、まとまって戦って、悲劇でしたとばかりに死んでいってしまう。
劇場のシートに唖然とする俺を取り残して。

学徒のリーダーを演じたチェ・スンヒョンや、反発する不良のクォン・サンウが好演しているだけにドラマの中途半端さと演出の迷いが実に勿体無い作品だった。



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