2008年9月15日月曜日

おくりびと/NARIZO映画レビュー

チェロ奏者の大悟(本木雅弘)は、所属オーケストラ解散で妻の美香(広末涼子)と故郷へ戻ってくる。旅行代理店だと思って求人広告を手にNKエージェントを訪れた大悟は、そこが「NK=納棺」の専門業者であることを知る。「えっ納棺!!!」
遺体を棺に納める仕事に戸惑いを隠せない大悟だが、巨額の借金を抱える彼にとって魅力的な給料...それに何だか社長の佐々木(山﨑努)にも気に入られてしまい、妻にも内緒で納棺師(のうかんし)の見習いとして働き出すことに。
誰でもいつかは誰かの死を送り出し、また送り出される日が来る。・・・そこには、さまざまな境遇のお別れが待っていた!笑いと涙の納棺人間ドラマ。

日本での公開を目前にモントリオール映画祭の大賞をはじめ、外国から賞賛を集めている本作。
「死」に対する価値観や儀式の内容は違えども、この作品が描く死者を送る側の死者への尊敬や敬愛、後悔や惜別...その他、もう会話を交わすことの出来ない相手に対する様々な感情は、万国共通なのだ。

誰にでも訪れる身近な事態でありながら、誰しもが極力考えないようにしている「死」について、全く予備知識なしにそれを職業とする世界に飛び込む羽目になったチェロ奏者。厳粛な空間に流れる戸惑い、シチュレーションコメディ的な笑いが各所に散りばめられ、残された人々の人間模様が面白く、可笑しく、そして哀しく描かれる。
映画のために作られたオリジナル脚本の本格人間ドラマだ。

俺は或る時、大切なヒトや身近なヒトを突然亡くす事が続いて、そのときから葬儀にはその人の人生の「縮図」が有る様に感じていた。もう、その人と何か発展的にこの世で絡むことの無い、別れの場所。そこには、本当に故人を大切に思っていた人達しか集まらない。会社の看板や、利害を通り越した場所の様な気がしたものだった。
この作品が描くのは、まさにそういう人間ドラマだ。
そして、葬儀とはきっと、文句を言わない故人よりも、残された人達の感情を整理するためのセレモニーなのだ。死者よりも生者のための儀式。この映画もまた、生きている俺たちにポジティヴに死を送り出してあげようと言っているように見える。

人が良くて頼まれると断れないタイプの主人公を演じた本木雅弘は、コメディのセンスも魅せる演技も抜群に上手いのだけど、奥さんを演じた広末涼子とのオシドリ夫婦振りが、作品に、とても良い感じの暖かみを与えていた。とても実年齢15歳差とは思えない夫婦だったネ。
しかしこの映画での広末の奥さんは、可愛かったなぁ。(笑)

それから最大の功労者は山崎務。やっぱ、この役者さんは凄いよね。彼が居なければ、この作品の印象は全然違っていたと思う。

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